ようこそ狂気で歪んだ悪夢の中へ…まあ、夢じゃないんですけど

――それではSAN値チェックのお時間です。ダイスを振ってください――

胸糞耐性のない人は、焼き付く壮絶な情景描写に悶え苦しみ、そうでなくとも、言葉および語彙力を失うことになるだろう。

まず一読した者は、必ずと言っていいほどその躍動感に目を奪われる。速度? 勢い? いいや、「緩急」がこれまでかと効果的に表現されている。ゆったりとした動き一つとっても、それが「蠢く」ものなかのか「這いよる」ものなのかを、視覚、聴覚、嗅覚、触覚に訴えかけて、リアルな質感まで描く出される。

いわんや、戦闘シーンだ。サバイバルホラーとあるだけあって、凄まじいの一言。グロテスクなはずなのに、その鮮明な描写には恐ろしいほどに「美しさ」を感じてしまう。


そうなれば、待ち受けているのは、ヤンデレなどという軟なものではない。あるのは、救いようのない理不尽と、這いよる恐怖。狂気に歪みきったラブストーリーが展開される。次は、香澄(ヒロイン)の口から一体どんな言葉が飛び出してくるのか……次は一体どんなことをするのか……絶望しかないのは分かっているのに、繰り出される展開には主人公同様に心臓が早鐘つ。

読めば読むほど深まる謎と、嫉妬と憎悪と狂愛の世界。

レビューでは、言葉を足せば足すほど、作品の良さが損なわれてしまう。この程度しか表現できないのが本当に悔やまれる。


一話一話が重厚で、読了後の満腹感は相当なもの。
骨の髄まで味わえる、ダークファンタジー。

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