絶望に続く絶望の中、ヒーローは狂女(妹)に打ち勝つことができるのか??

『ベルセルク』の魅力を知る方なら、残虐性と「美」が両立することを知っているのではないでしょうか。

本作では、映像作品のような鮮やかな残虐性が芸術として昇華されています。

青春のきらめきに心ときめかせたかと思えば、迫力満点の戦闘シーンに息を呑む。そんな目まぐるしい変化に、文字を読んでいることも忘れて感情を揺さぶられます。

特筆すべきは、ヒロイズムの欺瞞に深く切り込んでいる点です。本作の主人公・透は熱い性格で、強気をくじき弱きを助く、典型的なヒーロー体質の高校生です。彼の心の闇に焦点を当てることで、この作品は単純な戦闘ものとは一線を画した文学性を確固たるものとしています。

大変読みやすい文章でありながら、研ぎ澄まされたナイフのように鋭い「読まれる」表現力。字書きとして多くの学びがありました。

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