上司に不満を抱える男が殺人を実行しようとするが……? コミカルな短編

主人公、山本は勤めていた会社がつぶれてバイト生活をしている青年で、上司からはパワハラを受ける日々に耐えかねて心の中で殺意を募らせます。
それは悪魔と契約する夢を見てしまうほどで、友人に相談したところ道場と禅寺を紹介されるのですが……。

主人公は憎い相手を殺してやりたいとは思うものの実行するほどの行動力はなく、展開を通じて成長するのかというとなかなかそうでもなく、どこにでもいる弱い人間の業が描かれていて親近感が持てます。

実際に憎たらしい相手がいたときに、その気になれば人を殺せる手段があったらどうでしょう。
実行するとしてどう実行するのか。
本懐を達成したい気持ちとその結果として受ける刑罰を比べて、実行する気になるのか。
そういった疑問とぶつかる人間の業がシュールでコミカルなキャラクターを通じて描かれています。

作者さんの紹介文にある通り、どうしても許せない相手がいる時に読んでみると良いと思います。考えさせられつつクスリと笑える短編でした。

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