プロローグからシュールな世界観です。
驚きのニュースが淡々と放送される日常の中で、気弱な山本さんは、職場のパワハラに身も心も疲れ切っていました。
思わず、『あいつをぶっ殺してやりたい!』
と思いますが、山本さんにそんな度胸も技量もありません。
そこへ忍び寄る悪魔の誘い……
山本さんと似たような経験、みんなお持ちだと思います。
その時の悔しい気持ち、情けない気持ち。
どうすればよいのかわからなくなりますよね。爆発したくなります。
そんな私たちの心に寄り添ってくれる物語です。
最後に山本さんが辿りつくのはどんな境地か―――
是非確かめてみてください。お勧めです。
パワハラ上司小原に対して強い殺意を抱く、山本。でもいざ小原と対峙すると膝はガクガク、恐ろしくてとても反撃なんてできない……そう、山本はすぐに「ヒイーッ!」とビビってしまう超絶ヘッピリなのだ。
追い詰められた山本はグビリグビリと酒を飲んで酔い潰れ、夢の中で悪魔と契約を結ぶ。
ハチャメチャに面白い怪作です。
キャラの濃い登場人物達は誰も山本の殺意を否定せず、グイグイと背中を押してくれるのです。コミカルに進む物語、心に響く言葉がさりげなく散りばめられていることもあり、読者はどんどん引き込まれます。
ヘッピリだった山本くん、ついに復讐のゴングを打ち鳴らすのか?……と思いきや、衝撃のエピローグ!!
様々な小ネタも笑えるこの作品、コメディの皮を被っていますが、結末はかなりブラック。山本(と、カッパ)の未来はどうなる?!
短編の中に巧みに伏線が張られていて、それが絶妙に収束してゆかないところが、とてもいい味を出しています。
自分にとっての大事は、世の中では大したことではないかもしれません。またニュースになるような物事も現実味があるような無いような。でもその色んな平行線の間に、朧げな繋がりが見えた気がする時、ドラマチックな展開が生まれ……ないのがオモシロイのです。
コメディですもの。きっと今日もグビリグビリとやっていることでしょう。
因みに「1円を大切にしなさい。神様が宿っているから」と何かの拍子に話題に上がる話を昔読んだ気がします。主題ではありませんが、お金にしろ縁にしろ、小さな積み重ねがね……という話で。
なんとなく思い出させてくれるお話でありました。
コメディの中に盛り込まれたものを発掘する楽しさがある作品ではないでしょうか。
大丈夫、書いた私もよくわかりません(((
物語は世間の衝撃的ニュースから始まり、そして「すぐにビビってしまう」山本くんの日常へ変わります。
パワハラ上司へ殺意を抱く山本くん。しかし彼には実行する気力などありません。サブタイトルでさえ「ヒィーッ!」と叫んでます。
そんな時、ラーメン屋さんでも多分呼び出せちゃうんじゃない? 的な呪文で、大学時代の友人とよく似た悪魔を呼び出してしまうのですが……。
物語は2転3転。
悪魔は本当にいるのか? 果たして山本くんの未来は?
世界ではなにが起きていたのか?
あとカッパは何をしてるのか?
あなたの目で確かめてみて!
パワハラに苦しみながらも、生活のために耐え忍んでいる主人公。
しかしついに我慢の限界を迎える。殺ってやるぜ!!
友人のアドバイスもあって、道場や禅寺に行き、腕と精神を鍛えるのだが……。
展開が早く、ぽんぽん読めていくコメディ……のようで、とても皮肉が効いている内容です。難解になりがちテーマについて、軽やかに提示して見せる手腕は素晴らしい。読み手によって、また読んだ時の精神状態によっても受ける印象は変わるかもしれません。ブラックユーモアっていうんでしょうか、面白いです。
あとカッパ好きは読んだ方がいいです笑 カッパが良い味出してますから。
おすすめの短編です。
主人公、山本は勤めていた会社がつぶれてバイト生活をしている青年で、上司からはパワハラを受ける日々に耐えかねて心の中で殺意を募らせます。
それは悪魔と契約する夢を見てしまうほどで、友人に相談したところ道場と禅寺を紹介されるのですが……。
主人公は憎い相手を殺してやりたいとは思うものの実行するほどの行動力はなく、展開を通じて成長するのかというとなかなかそうでもなく、どこにでもいる弱い人間の業が描かれていて親近感が持てます。
実際に憎たらしい相手がいたときに、その気になれば人を殺せる手段があったらどうでしょう。
実行するとしてどう実行するのか。
本懐を達成したい気持ちとその結果として受ける刑罰を比べて、実行する気になるのか。
そういった疑問とぶつかる人間の業がシュールでコミカルなキャラクターを通じて描かれています。
作者さんの紹介文にある通り、どうしても許せない相手がいる時に読んでみると良いと思います。考えさせられつつクスリと笑える短編でした。
タイトルの時点で100点満点の作品ですが、読んでみると思った以上に深かったです。
パワハラ上司に対する殺意を募らせた主人公・山本は、悪魔が夢枕に立ったのを機に、いよいよ行動を始めますが……
なぜか友人の紹介で道場に入門したり、禅寺で坐禅を組んだりします。
シュールな空気感の会話や、道場の師匠の特濃キャラがめちゃくちゃ笑えます。
一般的に武道や禅は、精神を鍛え負の心に打ち克つ靭さを身に付けるイメージのものです。
上司に対する恨みでいっぱいだった山本さんの心にも、これで余裕が生まれるか……?
独特の角度から斬り込んだ、すごく皮肉の効いたお話でした。
めちゃくちゃ面白かったです!