図書委員の奥手JKと草食(⁈)男子高校生が繰り広げるもだもだな恋〜ただし先輩視点〜
郷野すみれ
第1話
「よろしくお願いします」
初めて火曜日の図書委員のメンバー二人と顔を合わせた時、三年生の
ここの高校の図書室は、授業の時間帯は司書、放課後は図書委員によって運営されている。四時ごろに学校が終わり、五時までは図書委員がいるべきで、六時までなら図書委員も生徒も帰らなければいけない。運動部に入っている真司は最後の夏の大会までは五時までいることとなる。
そして、真っ直ぐな黒髪をおろして俯いた眼鏡の少女、
「まるでマネージャーか助手みたいだな」
人気のない図書室で各々本を手にしていた二人が顔を上げる。
図書委員だけだとずいぶんと快活に話すようになってきた美優は頷く。
「はい。大事にされています」
真司はシャーペンを取り落とした。この二人は付き合っているのか? もしそうだとしたら、自分は逢瀬を邪魔する邪魔な存在なのではないのか?
だが、二人は何事もなかったかのように話し続けている。
「蒼遥君がマネージャか助手だとしたら、私は何? 選手?」
「どっちかって言うと、教授じゃね?」
どうやらそういうことではないみたいだ。真司はほっと胸を撫で下ろした。が、ふと気づく。
「そういえば、二人って同じクラスだよね?」
蒼遥と美優は不思議そうに首を傾げる。
「原さん、何組だっけ?」
「私、B組だよ。理系だし」
「あ、自分も同じだ」
「いや、ちょっと待て!」
真司は堪え切れずに声を上げる。
「なんでクラスの人を把握してないんだよ!」
二人は不思議そうに顔を見合わせる。
「蒼遥君、教室の席はどこら辺?」
「自分は窓側だよ」
「あ、じゃあわからないや。私は廊下側」
「仕方ないね」
「うん」
頷き合う二人。
「仕方なくない!」
静粛にしなければいけない図書室で思わず叫んでしまった真司の気持ちがわかるだろうか。幸い、図書室には誰もいなかったのでよしとしよう。
「クラスの人の名前はちゃんと覚えて! あと、せめて同じ委員会なんだから把握して……」
「えっ、でも」
いつの間にやら、かぶっていた猫を取り外した美優がむくれながら反論してくる。
「無理ですよ。四十人の顔と名前を一ヶ月で一致させるなんてどんな特殊能力ですか」
「自分を除くと三十九人だね」
「たしかに」
分かり合えている二人を前に、特殊能力でもなんでもないと反論する気力を無くした真司はため息をつく。自分は多数派の正論を言っていると思うのだが。
「いや、まあ……いいよ」
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