「おはよう、真幸さん。」


「ん…」


次の日、

私は初めて嘘を吐いて…仕事をサボってしまった。




身体がダルい────のは本当だったが…

新垣が今日だけは傍にいて欲しいと、いつになく我が儘を言ってきたものだから。



いや…実際は私自身が、

ここにいたかっただけなんだ。








「身体は平気、じゃないですよね…。」


申し訳なさそうに言いながら、擦り寄ってきた新垣はどこか嬉しそうに笑っている。


そう、昨夜私は彼の告白をあっさりと受け入れ…




一線まで越えて。

心はおろか、この身体ごと…結ばれた。






男に抱かれる不安も何もかも、

全て、新垣が拭い去ってくれたから…


不思議と抵抗なく。

私はこの身を、彼に委ねる事が出来た。




さすがに若さには…敵わなかったが…。








「ここで一緒に…暮らしませんか?」


その日は更に肌を重ね、

微睡む中で、新垣が私の耳元で囁く。



私は浮つく身体を、すぐ隣りの温もりへと甘んじて預け…





「そうだな…」


彼のそのプロポーズを、素直に受け入れることにした。









──────…





「お帰りなさい、真幸さん!」


「ただいま。」



新垣はもう、

あの時間帯のバスに乗ることはなくなった。






私が彼の家に住むようになってすぐ、

新垣は勤めていたホストクラブを、あっさり辞めてしまったからだ。


まあ元々それも手っ取り早く金を稼ぐ為の…

手段でしかなかったそう、だが。







私は相変わらずバスの運転手。

新垣は農家として…新たにスタートを切った。



まだまだ駆け出しで実入りも少なく、

苦労もあるだろうが…


彼なら何も心配はいらないだろう。








「私もすぐ着替えてくるから。」


「良いですよ、仕事上がりなんですから。ゆっくりしてて下さい。」



綺麗な顔に土を付けて笑う新垣は、

まさに太陽のように眩しくて。


ついつい魅とれてしまうくらいに…

いつの間にか私は、随分と骨抜きにされてしまったらしい。






「そんなに見つめられたら、照れるじゃないですか…。」



近づいてくる彼の手が私の頬に触れ…

うっとりと見つめられ、高鳴る鼓動。




ああ、そう言えば…


私はまだ肝心な事を彼に告げて無いことに。

今更ながら気が付いて。







「なぁ…」


「なんですか、真幸さん?」



「愛してる、透。」


「ッ────…!!」



初めて狼狽えて見せた透を、

微笑ましく見上げたのも束の間────…







「貴方って人は…!」



その後すぐ手を引かれ、家へと連れ込まれて。



何度も愛されてしまったのは、

言うまでも…ないだろう。




happy end.






********




余談ですが、透はエグいくらい稼いでたので生活には困らないはず。(堅実でアクセとかはほとんど貢ぎ物とか。その辺は境遇故に要領が良い。枕は必要無いほどの絶対王者だったのでしてないと思われ。)


スローライフ満喫しながら、ふたり(と一匹)でまったり過ごしてそうですねぇ。

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