⑨
「おはよう、真幸さん。」
「ん…」
次の日、
私は初めて嘘を吐いて…仕事をサボってしまった。
身体がダルい────のは本当だったが…
新垣が今日だけは傍にいて欲しいと、いつになく我が儘を言ってきたものだから。
いや…実際は私自身が、
ここにいたかっただけなんだ。
「身体は平気、じゃないですよね…。」
申し訳なさそうに言いながら、擦り寄ってきた新垣はどこか嬉しそうに笑っている。
そう、昨夜私は彼の告白をあっさりと受け入れ…
一線まで越えて。
心はおろか、この身体ごと…結ばれた。
男に抱かれる不安も何もかも、
全て、新垣が拭い去ってくれたから…
不思議と抵抗なく。
私はこの身を、彼に委ねる事が出来た。
さすがに若さには…敵わなかったが…。
「ここで一緒に…暮らしませんか?」
その日は更に肌を重ね、
微睡む中で、新垣が私の耳元で囁く。
私は浮つく身体を、すぐ隣りの温もりへと甘んじて預け…
「そうだな…」
彼のそのプロポーズを、素直に受け入れることにした。
──────…
「お帰りなさい、真幸さん!」
「ただいま。」
新垣はもう、
あの時間帯のバスに乗ることはなくなった。
私が彼の家に住むようになってすぐ、
新垣は勤めていたホストクラブを、あっさり辞めてしまったからだ。
まあ元々それも手っ取り早く金を稼ぐ為の…
手段でしかなかったそう、だが。
私は相変わらずバスの運転手。
新垣は農家として…新たにスタートを切った。
まだまだ駆け出しで実入りも少なく、
苦労もあるだろうが…
彼なら何も心配はいらないだろう。
「私もすぐ着替えてくるから。」
「良いですよ、仕事上がりなんですから。ゆっくりしてて下さい。」
綺麗な顔に土を付けて笑う新垣は、
まさに太陽のように眩しくて。
ついつい魅とれてしまうくらいに…
いつの間にか私は、随分と骨抜きにされてしまったらしい。
「そんなに見つめられたら、照れるじゃないですか…。」
近づいてくる彼の手が私の頬に触れ…
うっとりと見つめられ、高鳴る鼓動。
ああ、そう言えば…
私はまだ肝心な事を彼に告げて無いことに。
今更ながら気が付いて。
「なぁ…」
「なんですか、真幸さん?」
「愛してる、透。」
「ッ────…!!」
初めて狼狽えて見せた透を、
微笑ましく見上げたのも束の間────…
「貴方って人は…!」
その後すぐ手を引かれ、家へと連れ込まれて。
何度も愛されてしまったのは、
言うまでも…ないだろう。
happy end.
********
余談ですが、透はエグいくらい稼いでたので生活には困らないはず。(堅実でアクセとかはほとんど貢ぎ物とか。その辺は境遇故に要領が良い。枕は必要無いほどの絶対王者だったのでしてないと思われ。)
スローライフ満喫しながら、ふたり(と一匹)でまったり過ごしてそうですねぇ。
行き着く先は… 祷治 @jmjmjm1046
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