第6話動物ごっこ
死者が住まう市営団地、私は九階の廊下を歩いていた。
そして「906号」と書かれた部屋が目に留まり、私は部屋の中へとはいっていった。
するとそこにいたのは、女性とたくさんの犬・猫たちだった。それらは幽霊なので、私の存在には気づいていない。
「ハイハイ、みんな押さないでね。まだ、ちゃんとみんなの分はあるから。」
女性は犬と猫七頭ずつにエサをあげていた。
「とても動物が好きなんだなあ・・・。」
女性はとてもいい笑顔で、犬と猫たちとじゃれあっていた。
「アハハ!みんな、可愛いな。みんなは私の家族、私はみんなの家族だよ。」
女性は満面の笑みで言った・・・。
そして場面が変わった、女性は玄関から部屋へと入っていくと、椅子に座って頭を抱えた。
「なんで・・・、なんで立ち退かなきゃならないのよ・・・。」
立ち退き・・・、そういうことか。
どうやら犬と猫をたくさん飼っていたことが周りに知られてしまい、迷惑をかけていたようだ。
確認はしていないが、大抵の団地はペットの飼育は禁止となっている。
そもそも彼女自身は気づいていないが、彼女は飼育崩壊している。
現実的に一人で十四頭もの犬と猫を飼うなんて、経済的にも不可能だ。
「私にはもう、この子たちしかいないのよ・・・。それを奪おうだなんて、酷すぎるわ。」
女性はすすり泣きをした、そんな彼女を察した犬と猫が彼女の足にすり寄って来た。
「みんな・・・、私と一緒がいいのね。うん、私も一緒だよ・・・。」
そして女性は嬉しさのあまり、何と自ら動物のマネを始めた。
「ウソだろ・・・、壊れてしまったのか?」
そして女性は犬と猫たちと一緒に、じゃれあうのだった・・・。
その後、女性は十四頭の犬と猫たちに囲まれながら自殺したということが、七年前の新聞記事で明らかになった。
十四頭の犬と猫は生きていたが、その後どうなったかはわからない・・・。
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