第7話嫉妬のナイフ

死者が住まう市営団地、今回は六階の「608号」の部屋で起きた出来事を書いていく。

私が部屋へ入ると、一人の男が電話で何か話していた。

この男は幽霊なので、すでに亡くなっているのは明らかだ。

男は電話を切ると、何か不満でもあったのかいきなり、足をドンと大きく踏み鳴らした。

「チクショウ!!何でアイツばっか、上手く行くんだよ!!クソが!」

幽霊なので足音は聞こえないが、男はドスドスと歩いているようだった。

一体、彼は何に不満を持っているんだろう・・・。

私は彼の後を追って部屋へと入っていった、そして彼は手にナイフを持ちながらニヤニヤしていた。

「このナイフで・・・、今すぐにでもあの野郎を、あの世へと送ってやる!!」

男の表情からは、激しい嫉妬が浮かび上がっていた。











そして場面が変わった、玄関から先ほどの男と別の男が入ってきた。

「こいつが、憎き相手なのか・・・?」

私は二人の後についていった。

ところが男は別の男と仲良く会話を始めた。

「いやあ、個展開催おめでとう!」

「ありがとう、君もぜひ見にきてよ。」

「あはは、予定が空いたら行くよ。」

男の笑顔が引きつっている、妬んでいる気持ちがにじみ出ているようだ。

その後も二人の男は談笑を続けて、そして別の男がトイレへ行こうと席を外した時、男はポケットから白い粉の入ったビニールの小袋を取り出した。

「これは・・・!!」

間違いない、何かの毒物だ。

そして男は冷蔵庫から缶ビールを二つ取り出すと、封を開けて二つの缶に白い粉を入れた。

「あれ・・・?何で二つとも入れたんだ?」

そしてトイレから別の男が戻ってくると、二人の男は缶ビールを飲んだ。

そして二人とも絶命した・・・。









最初に見た男の名は浜田卓夫はまだたくお、彼は画家を目指していたが中々売れずに、親友で先に売れた岳斗兵吾がくとひょうごに強く嫉妬していた。

しかし嫉妬する自分に嫌悪感を感じ、苦悩の末に岳斗を殺して自分も死ぬことにしたのだということが、後の調査でわかった。

妬みつつもやはり友だちを見殺しには出来ない、そんな男の物語だった。


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