第9話母子の終活
死者が住まう恐怖の市営団地、今回は十一階へ行ってみることにした。
「1103号」と書かれた部屋へ入ると、まず目に映ったのはテレビを見ている二人の子どもと、家事をしている母親らしき女性だ。
「二人とも、ご飯よ!」
母親に呼ばれて二人の子どもは席についた。
母親が料理をならべて食事が始まる、ありふれた生活だがこの生活が終わってしまうことを私は知っている。
この二人の子どもと母親は幽霊、私が見ているのは自殺への過程である。
そして食事中にも関わらずに、電話がなった。母親が電話に出た。
「もしもし、春山です。・・・・はい・・・はい・・・えっ、あの人が!そんな・・・はい・・・わかりました。すぐに来ます。」
そして母親は電話を切ると、子どもたちに食事を止めて一緒に来ることを指示して、それから大急ぎで出ていった。
そして場面が変わった。
先ほどと同じ部屋で二人の子どもと年老いた男が一人いた。
そしてとなりの部屋に仏壇があり、そこに置かれた遺影には若い男がいた。
「これは・・・、まさか父親!?」
大体の筋書きが見えた、どうやら先ほどの電話は、父親の死を告げる電話だったのだ。
二人の子どももどこか落ち込んでいる表情をしていた。
そして年老いた男はおじいさんだ、おじいさんは別の部屋へ行って、「これから買い物に行ってくる」と母親に告げて出かけた。
そして母親はそれを見計らったかのように二人の子どもの所へ来ると、二人を思いっきり抱きしめた。
「父さんがいなくなって、辛いよね?悲しいよね?でも、もう大丈夫。すぐに父さんのところへ、連れていけるからね・・・。」
母親と二人の子どもは、泣き出した。
そして母親はポケットからマッチを取り出すと、部屋の隅に置いてある新聞紙の束に火をつけた。
後の調査で、その後の事が放火自殺事件として新聞記事に載っていた。
この火事で死んだのは、
事件の五日前、恵の夫・
三人は抱き合った状態で発見されたそうだ・・・。
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