第一実験室より

――とある人造人間による前書き

この物語の語り手として、僕はあまりふさわしくはないと思う。確かに僕はあの出来事の当事者だが、僕は人造人間、つまり人間によって造られた自ら思考できる人工の生命体でしかない。そもそも執筆に慣れているわけでもないし、人間のような情感に溢れる文章なんて書けるわけがない。

それでも、この話は僕が書くことに意味があるのだ。人造人間は嘘は吐けないし状況を冷静に判断できる。それに……いや、もういいだろう。最後まで読み通してくれた人には、僕がこの文章を書くことになった経緯を理解してもらえるはずだ。

あの夏の出来事は、少なくとも僕にとっては狭く家具の少ないあの部屋から始まった。


＊2018年から2021年の３月までキャスフィという掲示板サイトに投稿していました。
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