あとがき
この度は私の書いた物語にお付き合いしていただきまして、誠にありがとうございます。
この物語は「放課後対話篇」という少年少女が放課後に雑談を交わしながら、身の回りの問題や理不尽に向き合い、解決する物語の特別編になります。
今回のお話のテーマとしては「変わらないものに価値はあるのか」ということについて描いてみたつもりです。
「実用的」という単語の反対語や対義語を調べると第一に「趣味的」というものが挙がるようです。しかし私としては他にも「装飾的」「形式的」「象徴的」という言葉が該当する気がします。つまり「役に立つもの」「有用なもの」に対して「形だけの飾り」「シンボル」というニュアンスを想起するのです。
そして往々にして「実用的」という言葉は「可変的」「変われるもの」という性質と相性がよく、それに対して「形式的」「象徴的」という言葉は「不変的」「変わらないもの」という言葉に近しいものがあると思うのです。
古代に作られたものでも道路や水路などの実用的なものは使用され続けるために消耗し、補修や改築により変わり続けるため後には残りません。しかし権力の象徴として作られた巨大な王墓や石像などはそれ自体は役に立たないからこそ、消耗せず変わらずに残り続けます。
あるいはトマソンのように当初は有していた役割をなくしたために、使用されることなくそのまま残り続けることもあるのでしょう。
私は自分自身が新しいサービスや商品にすぐに飛びつかずに既存の愛着があるものにしがみついてしまうタイプなので、つい「変わらずに取り残されてしまったもの」に感情移入してしまいます。
もちろん実用性を追求して改良し変え続けることが人間の文明を発展させてきたのは事実です。そういう変われるものの利便性を認めたうえで「それでもあえて実用性ばかりじゃなく変わらずに残り続けるものに意味を見出せる人間の思い入れや気持ちはときに尊いものなんじゃないかな」と思いながらこの物語を作ってみました。
なお、この物語はもともと過去シリーズ「放課後対話篇4」の最終章として執筆したものです。しかしエピソードとして若干長くなりすぎてしまったことと謎解きのインパクトが弱いような気がしたため、一度お蔵入りしていました。
しかし書き上げたものを読み返しているうちに描きたかったテーマそのものは悪くなく思えたので、何度か推敲を繰り返して今回掲載することにしました。
そのため物語としての区切りを意識した方向性が残っており、主人公の月ノ下くんと星原譲の関係が劇的に進展していますし、結びの文章もある種の「最終回」的な雰囲気を強調したものになっています。
とはいっても今回がこのシリーズの最終回というわけではなく、これからもアイデアが出る限りは続けたいと考えていますのでその時もお付き合いいただけたら幸いです。
この物語を読むことで、貴方が少しでも肯定的な気持ちになっていただけたら本当に嬉しく思います。
また、もし楽しんでいただけましたら、星の評価をしていただけますと創作の励みになりますので何卒よろしくお願いいたします。
それでは、さようなら。どうかお元気で。
放課後対話篇(特別編) 宝探しと不変性の是非 雪世 明楽 @JIN-H
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