主人公の草壁薫は、自分に自信がなくて引っ込み思案の高校生。
彼のクラスメイトの中に、『一発』を売る女子生徒の花咲美空がいた。
花咲さんが売る『一発』とはどんなものだろうと草壁くんは友達とこっそり盗み見に行きます。
そこで、彼が目にしたものとは……
そして、事態は思わぬ展開へと進んでいき……。
最初は自分が人生を変えるような一発を頼むなら何にしよう……と、悩みながら思案する草壁くん。
きっと、本作を読みながら読者の方も自分ならどうするだろう?と考えると思います。それがまた楽しいです!
さらに、予想外の展開にあっという間に引き込まれて、彼らの世界の住人のような気持ちで読み進めること間違いありません。
随所に張り巡らされた伏線とその見事な回収!登場人物たちの成長とハラハラする展開!素晴らしい作品にめぐり逢いました。
ぜひ読んで頂いたい作品です!!
数々の発明品を作った、天才少女・花咲さん。
その発明品をクラスメイトに提供する彼女は、『クラスの一発屋』と呼ばれていました。
いじめられっ子の鴨井くん、投資をする果部、ミュージシャンを目指す宇田さんは、彼女に勧められて「一発」成功しますが……。
第3話を読んだ私「うさんくさい。絶っっ対没落フラグでしょこれ。『笑うせー〇すまん』的な」
第4話、フラグは見事的中しました。
三人に責められる花咲さん。それを、主人公である草壁くんが庇います。
それを恩に感じた花咲さんは草壁くんの「一発」を叶えたいといいますが、草壁くんは願いが見つけられませんでした。
そこで花咲さんは、自分の発明品を見せて、どんな願い事が叶えられるかを草壁くんに説明します。
勘違いされそうですが、彼女はかなり誠実な人間です。その答えがたまにうっかり経緯を省いちゃうだけで、言葉をしっかりと尽くします。
しかし草壁くんが抱いた願いとは、花咲さんの発明品では叶えられないものでした……。
物語中盤、花咲さんの発明品を狙う奴が登場します。
大ピンチの花咲さんを、草壁くんは救うことが出来るのか!?
努力は報われるとは限らない。
けれど、経緯がなければ納得しないのも人でした。
そのためには踏み出す一歩が大切なのだ、と。
花咲さんと草壁くんの誠実な考えは、とても素敵だと思います。
夏休みにぜひ読んでもらいたい作品です!
まずタイトルの『一発屋』ですが、いやらしい意味ではありません(笑)
この物語は言い換えるなら『一山当てる』を手伝う天才少女と無気力な少年の青春ものであることを述べておきます。
『一発屋』である少女は依頼を受ければ願望を叶えてくれます。しかし人間は欲望に弱い……だから彼女の意図とは別の結末に辿り着く。そこに悪意は無いが人は弱いので一発屋である彼女へ逆恨みが向く。
偶然それを助けた少年は、一発屋である彼女を知り成長していく。
作者さんの巧みな演出と物語の道筋、情景が浮かぶ見事な文章と読み応えは十二分と言える名作。一話目からの内容を最後まで余すところなく繋げる技量は流石の一言です。
青春ものをお求めなら私は迷わずこの作者さんを推します。是非、ご一読を。
『クラスのあの娘は一発屋』という題名からみなさんは何を想像しますか。
舞台はとある高校。
冒頭から展開されるのは『一発屋』と周囲から呼ばれている女の子、花咲美空が『一発屋』としてクラスメイトと怪しい取引をしているところから始まる。
『一発屋』と呼ばれている彼女は少し変わり者であったが、校内ではそれなりに有名人であった。そんな花咲さんを遠くから見つめていたのが、今作の主人公であり物語の視点である草壁薫。
彼女がなぜ『一発屋』と周囲に呼びれているのか、『一発屋』とは何か、その秘密を知った草壁君はある日、身の危険が迫っていた花咲さんを助けることがあり、そこから物語は盛り上がっていく……盛り上がっていくんですよ!
私はほんとにこの作品に出会えてよかったと思いました。
私が抱いた今作のイメージとしては『一発屋』という仕事をしている花咲さんが、草壁君と出会って色々と協力してラブっていく……みたいな日常系ラブコメディ的な物語なのかなと思ってましたが、全然違いました。
なんだこの展開は、と。
予想だにしなかった展開に目が釘付けになり、草壁君の行動にハラハラして、花咲さんの言葉に心打たれる。
ここまで感情移入したのは久し振りです。
花咲さんはなぜ『一発屋』というものをやっていたのか。それを語る場面には感動しました。
そして作者である雪世さんにビール一本くらい奢ってやりたい、そんな気持ちにもなりました(๑´ڡ`๑)。
とても楽しい物語をありがとうございます。
高校生の草壁薫。
彼のクラスメイトには「人生を変える一発」を売る「一発屋」なる少女・花咲がいて……。
主人公の草壁は凡庸ながら等身大の高校生でかなり親近感が湧きます。
そして、冴えない彼を変えていくヒロイン花咲の天才ぶりが大変爽快。
物語は実によく計算されていて、起承転結がはっきりしています。
前半に仕込んだ伏線が後半どんどん解消され、昇華する様子がまたまた素晴らしい。
設定も主人公もヒロインもサブキャラもそれぞれの役割を120%こなす秀逸な作品でした。
数学的、哲学的、物理的……どれも要素としては固いものですが、平凡な主人公を通して読者にうまく説明されていて、この塩梅はなかなか狙ってできるものではないと思います。
作者様の明晰な頭脳、多くの知識から成る発想力、それらがうまく噛み合って相乗効果を得た集大成と感じました。
別の作品である「放課後対話篇」もそうですが、しっかりとした筋立てがあり、必ず要所要所に思わず唸ってしまうようなオチを提示されている。
このような作品がサラリと書けてしまう作者様には、もう新人賞を獲得され、世に良作をどんどん送りだしていただくしかありません。
素晴らしい作品を読ませてくださり、ありがとうございました!
普通の高校生だった主人公は、世界の隅っこにうずくまって何もしない生き方を選ぶようになっていた。
その主人公の前に、『人生を変える一発』を売っている女子高生が現れる。
奇想天外なストーリーではありますが、専門知識も豊富で、情景描写も心理描写も丁寧に描かれ、読み進めるうちに作者様の世界観にどんどん引き込まれていきます。
クラスメイトとの関係。
友人、過去のできごと。
女子高生と接し事件を解決していくうちに、主人公の考え方にも変化が現れます。
「一」か「ゼロ」か、「成功」か「失敗」か。そんなことを恐れずに突き進む少年少女の冒険。ラストは淡い恋心も。
――あなたにとって、『人生を変える一発』とは?
私にとって、人生を変える一発とは?
そんなことを考えさせられる作品です。
なんとも意味深なタイトルから引き込まれますが、最後の最後まで魅力的な物語でした。
世間をアッといわせ、本人の人生そのものまで変えてしまうような『一発』。
その一発をクラスメートに売っている、不思議な天才「美空」さん。
クラスメートの一人だった「草壁」くんと彼女の出会いから不思議な物語の幕が開きます。
もちろんその一発を作り出す彼女の天才には秘密があります。
そして彼女に売ってもらった秘策で、クラスメートたちは次々と人生を変えていきます。だがそうそううまい話があるはずはなく……という展開なのですが、これがまた面白い!
丁寧に書かれた不思議なドラマは人の業や深みを感じさせてくれます。
そして彼女の秘策の秘密にはあっと驚くようなSF的な面白さがあるのです。
これがまた面白い。
ありえない話というのではなく、いかにもありえそうな話なのです。
面白いSFというのはシミュレーションの楽しさがあると思うのですが、まさにその楽しさに満ちています。
さらに物語は徐々に盛り上がり、見事な人間ドラマを見せてくれます。
それは主人公の成長と恋の物語であり、失くしたものを取り戻す物語でもあります。
とにかく切り口の面白さと、波乱万丈のストーリー、等身大で素直に応援したくなるキャラクター。
その全てが実にうまくかみ合って、唯一無二の面白い作品に仕上がっています。
ぜひ読んでみてください!
薫の抱いている想い、
日常の中、世の中への
世界への無力感は。
共感出来るものがあります。
努力が報われるわけではない、
現実の世界。
自分の実力と、冷静に向き合い、
静かに、事無く、生きることを選ぶ。
スポットライトを浴びるような、
人生が待ち受けていないのであれば、
無駄な努力をせず、
目立たず、生きる方が賢明なのではないか。
努力すればするほど、
報われない悲しみは、大きいものです。
そんな彼の前に、現れる彼女。
一発屋が一体、何を意味するのか。
知った時の驚きと、わくわく感は、
そんな後ろ向きな想いに、
大きく、強く、背中を押してくれます。
正しいこと、悪いこと、
物事の本質を、彼女の存在は、
示してくれるようです。
一風変わった彼女の存在が、
驚きと共に、輝いて見えます。
一発屋である、美空に
訪れる、数々のクラスメイトの依頼。
巧みな解決に、驚かされます。
そして起こる事件。
クラスから始まる出来事は、次第に、
大きく動き出します。
人生を変えるような一発。
何を願うでしょうか。
自分には、願う夢があるでしょうか。
美空と薫のやり取りは、
SFや、ファンタジックでありながら、それよりも、
現実のものとして、胸に迫るように
思います。
薫は、そして、美空自身は、
何を願うでしょうか。
正反対の境遇である、二人の、
夢や願いへの思考は、興味深いです。
美空が、一発屋をする理由、
彼女の依頼人への願い。
薫の恋模様に、
量子コンピュータの存在。
彼女の過去。
二人の想いは、個人の願いを超え、
人類の視点に立ってゆきます。
コンピュータに操られる人々。
巻き起こる、壮大な事件。
巧みに仕掛けられた敵の作戦に、
二人はどう立ち向かうか。
美空の反撃と、
クラスメイトの存在。
その手法は、
今の時代を感じます。
友情を廻る、過去の想い。
驚きの展開が、胸に迫ります。
人生を変える一発。
人の幸せや願いは何か。
根源的な問題に問われ。
そこに込められる想いに、
涙します。
面白かったです。具体的な内容については他のレビュアーの皆様が書かれていらっしゃるので触れませんが、ネタの使い方がとても丁寧というか、細部まで非常に作り込まれているんです。「一発屋」という一見大雑把に思えるタイトルに騙されてはいけません。私は騙されました。むしろこの作り込みこそSFだと思います。だってSFって、読者がうるさいじゃないですか(失礼)ちょっと論理破綻したらすぐにあげつらわれる(暴言)だから妥協できないけど、そっちばかりに目が向くと今度は小難しく、言い訳ばかりが増え、面白くなくなってしまう。両立させるのが難しいんです。だけどこの作品は理論的にエンタメしてるんですよね。もちろんこの作品には言い訳などありません。
にもかかわらず、作者様はこの作品を「現代ドラマ」だと言うわけです。奥ゆかしいですね。実際ミステリーかつラブコメな味付けを考えると、わからないでもないですが、もったいない気もします。別に「SF > 現代ドラマ」ではないですし、そもそもSF自体に人気があるわけでもなく、純粋に私の好みの話なのですけど、様々な近未来的ガジェットが出てくるから、とか、物理学、脳科学の話が出てくるからというよりもむしろ背景に見え隠れする骨太な哲学にSFを感じました。
キャッチーなタイトルに惹かれて本作を読み始めたら、ページをめくる手が止まらなくなりました。
「人生を変える一発」を売っているという女子高生に、主人公の男子高校生が出会ったところから始まるのが本作のストーリーです。
その少女の不思議な「売りもの」には、実はあるアイテムが絡んでいるのですが(具体的にそのアイテム名を出すと軽いネタバレになるかもしれませんので、未読の方は本作を読んでその正体をご確認ください)、そのアイテムの使い方が巧みであり、本作の最も大きな「売りもの」でもあると思います。
近未来的でありつつ、現実世界でも開発が進められているそのアイテムが現実とフィクションの境目をぼかす効果を与えてくれていたため、とりわけ深い没入感を私は味わうことができました。
また、その世界で躍動する少年と少女がそれぞれ魅力的であること。そしてその2人の距離感が絶妙であることで、王道のボーイミーツガールとしても充実した読後感を得ることができました。
単なるエンタメ小説の範疇に収まらず、多くの思春期の少年少女が抱えているだろう悩みや欲に寄り添ったテーマが本作の背骨になっていることも、強調しておかねばなりません。
素晴らしい小説でした。皆さんも是非読まれることをお勧め致します。