一発やる?(やらない)

面白かったです。具体的な内容については他のレビュアーの皆様が書かれていらっしゃるので触れませんが、ネタの使い方がとても丁寧というか、細部まで非常に作り込まれているんです。「一発屋」という一見大雑把に思えるタイトルに騙されてはいけません。私は騙されました。むしろこの作り込みこそSFだと思います。だってSFって、読者がうるさいじゃないですか(失礼)ちょっと論理破綻したらすぐにあげつらわれる(暴言)だから妥協できないけど、そっちばかりに目が向くと今度は小難しく、言い訳ばかりが増え、面白くなくなってしまう。両立させるのが難しいんです。だけどこの作品は理論的にエンタメしてるんですよね。もちろんこの作品には言い訳などありません。

にもかかわらず、作者様はこの作品を「現代ドラマ」だと言うわけです。奥ゆかしいですね。実際ミステリーかつラブコメな味付けを考えると、わからないでもないですが、もったいない気もします。別に「SF > 現代ドラマ」ではないですし、そもそもSF自体に人気があるわけでもなく、純粋に私の好みの話なのですけど、様々な近未来的ガジェットが出てくるから、とか、物理学、脳科学の話が出てくるからというよりもむしろ背景に見え隠れする骨太な哲学にSFを感じました。

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