【祝・直木賞候補】待望の書籍化。公式連載の続きを読んだ。

【ネタバレは最小限に抑えたつもりですが、こんなものは読まずに書籍を手にし、結末を見届けることをお勧めします。がっつり怖いです。】

渋谷再開発の工事現場の作業員による発信と思われる不穏なSNS投稿、それを調査する主人公の周辺で様々な怪異が発生し始める。舞台設定は2015年、大規模開発に伴う路上生活者排除の動き、それに足並みをそろえるかのように生活保護受給者を「自己責任」と断罪するようになった不穏な時代を背景に物語は進んでいく。

工事現場の地下深くに設えられた祭祀場、鎖で繋がれたホームレスを開放したことにより、主人公はこの世に解き放ってはならないものまで解き放ってしまう。
主人公の家族(身重の妻、小学生の娘)、彼が属する会社・部署、工事現場、路上生活者とそれを支援するNPOなど、舞台設定を非情に丁寧にリアルに作り上げてあるために、怪異など信じない主人公が、あるきっかけでストンとその得体の知れないものに取り込まれてしまう描写がそら恐ろしく、そこからはノンストップで怒涛の展開を遂げる。

公式連載をなんとなく読み始めたのは昨年2022年の夏頃で、以来いつ書籍が発売されるのかと心待ちにしていた作品である。カクヨム版で、全体の三分の一ほど読むことができる。しっかりと怖いホラーが読みたいのであれば、おすすめである。

追記:
2023年6月16日に、第169回直木賞候補作の発表がありました!

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