名古屋を舞台に探偵事務所で助手としてバイトしている高校生、服部朔が探偵である樹神皓志郎のお手伝いをしながら、依頼を解決していく…というお話です。
このお話は先ず、ご当地ご飯にやられます。とても、美味しそうなんです。怪異という不穏な気配がありながらも、とにかく、ご飯の描写にお腹が空いてしまうのです。
同時にこの物語は怪異に誘われるように深く入り込み、のめり込んでしまう魅力があります。
そして登場人物が皆様、素敵です。
服部君は応援したくなりますし、樹神先生の安心感が半端ないです。その為に安心して物語を読み進めることが出来るのです。
共感応を持つ為に苦労してきた服部君を導く樹神先生と百花さんの二人のやり取りも素敵です。三人がそれぞれの能力を合わせて進む物語は点と点がひとつとなって、最後に服部君の抱えていたものへと着地します。
零和の今尚、生きる怪異は人間の哀しさが作るものとして、切なくもどこか心地の良い余韻を残して解決していきます。
それでも、どこかやりきれない思いや、背けたくなるような、人間の心が描かれていて、その度に出てくる登場人物達に思いを馳せてしまいます。
また、彼らに会いたくなる。そう思わせる心地よさもある物語です。
樹神探偵事務所で助手をしている主人公、服部朔は共感応の特殊能力を持っている。そんな彼が、雇用主である皓志郎と調香師・百花と三人で依頼のあった怪異事件の調査に乗り出し、事件を解決してゆくミステリー調現代伝奇。
現世と幽世の狭間を往復したり、生霊や死霊が出てきたりするが、薄気味悪い、後味悪いレベルなのでホラーが苦手な方でも問題なく楽しめるエンタテインメントだと思う。
死霊の怨念や生霊の思いが渦巻く世界観。
そんな中、朔は己がどうあるべきかを問い掛け、一歩一歩歩き出す。
さり気なく入ってくるB級グルメの飯テロあり。
最初から最後まで通して読むと、全て繋がっているという仕立て。
全体的に読みやすい構成で、気が付くとあっという間にすらすらと全話読めてしまう。
夢枕獏の「陰陽師シリーズ」がお好きな方にオススメ。