エピローグ
美しいメロディーが、わたしの胸をずんと射貫いた。
これはたしか、overtureというんだ。序曲って意味だっけ。お
うりゃ、おい! うりゃ、おい! うりゃ、おい! うりゃ、おい! 場内の客がいっせいにコールを上げ始める。オレンジ、ピンク、イエロー、パープル。4色の光が揺れる。右隣ではもちろん、ピンクの光を振り回す刈田くんがいる。
やばいこれ、すごく好きだ、わたしこの瞬間が好きだ。
二の腕に鳥肌が立つのを感じながら、わたしもオレンジのサイリウムを握りしめた。
ずいぶん遠いところまで来てしまった気がする。
しょうがない。あの白いイヤホンを耳に突っこまれた瞬間から、わたしの運命は思わぬ方向に進んでしまったのだから。
ロッカーに預けたリュックの中には、物販コーナーで買った怜奈たちへのお土産が入っている。嘘マドのロゴのキーホルダー。ミッチェルマウスのお礼だ。
そうだ、4人で嘘マドのコスプレとかしたら楽しいんじゃないかな。わたしはネリをやらせてもらって、髪が長くてピンクの好きな怜奈はユリヤがいいんじゃないかな。
みんな、のってくれるかな。曲を覚えて振りコピしたら、刈田くんMIX打ってくれるかな。
スモークが炊かれたステージの上に、4人の少女のシルエットがゆっくりと現れる。地鳴りのようなどよめき。会場のボルテージが最高潮になる。
オレンジに光るサイリウムを突き上げて、わたしも自分のものとは思えないような高い歓声を上げた。
<おわり>
overture 砂村かいり @sunamura
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