誰かの心に希望や勇気を与えるかもしれない――。そんな、小さな物語

エッセイというものの面白さは、小説のような創作ではなくリアルに近いということです。
云わば他人(作者)の人生、考え方、その人が見ている世界を追体験できる面白さを内包しています。
このエッセイは、タイトル通り「女子学生服で6年間を過ごした僕の実話」、まさにこれになります。
LGBTというテーマを扱ったものでありますが、そこに批判めいたものや難しいものはありません。
ただ、作者が過ごしてきた6年間を抑制の効いた文章で綴っています。
小説では起承転結が少なからず用意されており、読者をクライマックスに向けて誘導していくのですが、このエッセイでは劇的な展開はありません。
だからこそ、人の心に訴える何かを秘めています。
視点は様々。今、この問題で悩んでいる方の目線。その方の親の目線。その方の友達の目線。
世界の片隅で繰り広げられる、ありふれた小さな物語がここにあります。