優しすぎるほど優しくても、やっぱり温かい

 ファンタジー作品。といっても現代の日本が舞台で、かなり地に足がついた現実寄りの世界観なのですが、主人公の女性の一族に代々祟りをなす猫神がいて、それがある日忽然と彼女の前に姿を現して……という感じの導入になっています。

 先に一言で総括すると、人間の心の機微の深いところに手を触れるような、とても優しい物語でした。猫神様のキャラクター性がとてもよかったです。わずか二万字の物語でここまで二者の関係性や心の絆といったようなものを描き切るのはなまなかのことではありません。

 いや、ほんといいですよね。結婚詐欺とか出ては来るけど、暴力とかも出ては来るんだけど、それでもなんていうかこの、優しい世界と優しいキャラクターたちが織り成して作り上げる世界の、本当になんと温かいことか。

 掌編には掌編の、二万字スケールの作品には二万字スケールの作品の難しさがありまた面白さというものがあるとわたしは考えるのですが、この作品のすごいところはきっちり二万字スケールで着地する規模感でしっかり物語がまとまっているところだと思います。

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