優しく多彩な表現・描写で彩られた現代ファンタジーの秀作

これまで様々な作品を拝読させていただき、自分の作品とのレベルの違いを思い知らされて、凹むことは多々ありましたが、この作品にはそんな感情さえも起こらず、ただただ脱帽しました。

盲目でありながらも霊的な存在が見える青年・朝香。
朝香の盲導犬、そして相棒として意思の疎通が可能な元狛犬のゴールデンレトリーバー・明。
生前の記憶を失くした女の子の幽霊・ユウ。
この3人を中心に、日常に潜む幻想的な物語が進んでいきます。

物語には、実に多彩な言葉・表現が上手に用いられており、それはその場の空気や匂い、緊張感さえも肌で感じさせるほどで、まさしく言葉が物語を彩っていることを実感させられます。
そこに、難しい言葉を押し付けてくるような嫌味は一切なく、ただその言葉が心に溶け込んでいきます。

また、昨今は、最強無敵、ハーレム、NTRなどといった、ある意味ヒステリックな内容の作品が多い中(それが悪いわけではありません!)、深いテーマの題材を分かりやすく噛み砕き、優しく囁くように読者の心と五感に届けてくれる稀有な作品です。

作者様の意図とは違うかもしれませんが、慌てての一気読みはオススメしません。
じっくりとその言葉の彩りや、胸に去来する情景を楽しみながら読まれることをオススメします。

もっともっと評価されて良い作品です。
気になった貴方、まずは読んでみましょう!

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