この物語は、盲目であるがその代わりに霊的な存在を見ることができる青年「朝香」と、元狛犬の盲導犬「明」生前の記憶がない幽霊の少女「ユウ」の中心に据えて進んでいきます。
物語の大筋は、移ろいゆく世界の中で、唯一その瞬間を変わらぬものにできる「写真」という物に、人の様々な思いを知りそれがまた繋がることの願いを込めて、渡していく……というものです。
文章は多彩な表現が用いられ、その言葉のチョイスもとても美しいと思いました。読んでいるとそのキラキラとした光景が鮮明に浮かび上がってくる感覚です。
正直、今まで自分が書いていたものは小説じゃないな、と心の底から思ってしまうくらい圧倒的な文章力でした。
この作品は以前「疲れた社会人への癒し」というような企画に参加していて、私もぜひそのような人にこそ読んで欲しいと思いました。
また、ざまぁ、NTR、ハーレム、チート、バトルといった刺激を求めた作品が流行っている今、若者……主に人格形成に大きな影響を受ける「10代」の子に是非読んでほしいです。
本来なら、ネット小説として無料で公開されるような類のものではないと思います。
そういう内容ですしクオリティです。
なので、ぜひ皆さんも読んでみてください!
これまで様々な作品を拝読させていただき、自分の作品とのレベルの違いを思い知らされて、凹むことは多々ありましたが、この作品にはそんな感情さえも起こらず、ただただ脱帽しました。
盲目でありながらも霊的な存在が見える青年・朝香。
朝香の盲導犬、そして相棒として意思の疎通が可能な元狛犬のゴールデンレトリーバー・明。
生前の記憶を失くした女の子の幽霊・ユウ。
この3人を中心に、日常に潜む幻想的な物語が進んでいきます。
物語には、実に多彩な言葉・表現が上手に用いられており、それはその場の空気や匂い、緊張感さえも肌で感じさせるほどで、まさしく言葉が物語を彩っていることを実感させられます。
そこに、難しい言葉を押し付けてくるような嫌味は一切なく、ただその言葉が心に溶け込んでいきます。
また、昨今は、最強無敵、ハーレム、NTRなどといった、ある意味ヒステリックな内容の作品が多い中(それが悪いわけではありません!)、深いテーマの題材を分かりやすく噛み砕き、優しく囁くように読者の心と五感に届けてくれる稀有な作品です。
作者様の意図とは違うかもしれませんが、慌てての一気読みはオススメしません。
じっくりとその言葉の彩りや、胸に去来する情景を楽しみながら読まれることをオススメします。
もっともっと評価されて良い作品です。
気になった貴方、まずは読んでみましょう!