新選組、その残照

新選組といえば、京の壬生に居を構えて、刀を振るって、京の治安を守りつづけたというのが、華として知られています。
しかし――維新回天、大政奉還と、幕府の衰勢に従って、新選組の戦いの舞台も、東へ北へと流れていくことになります。
後世の我々の目から見ると、箱館へと至るその苦闘の軌跡は、あたかも京において旭日昇天のごとき新選組が、落日の侘しさと儚さを感じさせるものがあります。

本作は、その新選組の落日の一幕を描いています。
甲陽鎮撫隊として後に知られるそれは、この後の戊辰戦争の舞台が東北であることから、結果は言うまでもないでしょう。
そういう、暗雲立ち込める新選組――近藤勇と土方歳三が、故郷である武蔵野を征く時、その胸中を去来するものは何か――

淡々とした文章で語られるそれは、哀しさと切なさと――美しさがあります。

ぜひ、ご一読を。

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