第2話 アークドラゴン

 アークドラゴンの体内に爆炎の杖・・・爆炎を呼び覚ます魔石部分だけでいい・・・を転移させて、体内で爆発させれば。


 転移魔法を一回使用する「転移の指輪」は持っている。これを分解して、装着者を転移させるのではなく、爆炎の杖の魔石を転移させる魔道具を即席で作ることは可能だ。


 次に、転移に必要な座標計算だが、この魔法はスピードが遅い。本来、地図を開いて休憩しているようなときに使うものだからだ。また、通常は動いていないもの同士の間でしか座標計測はできない。だが、幸いなことに、今はドラゴンのほうが休憩してくれていて、身動きをしない。転移の魔道具とドラゴンの体内の間の座標計算をのんびり時間をかけて行うことができる。


 俺は早速、魔道具の加工を始めた。


 まず、転移の指輪を分解して、魔石を取り出す。そして、素の魔石をひとつ取り出し、転移の魔石と連結して、溶着光線筆で接着した。そして、術式に改造を施し、転移の魔石を、装着者ではなく魔石に触れさせた爆炎の魔石を転移させるように変更する。


 さらにもうひとつ素の魔石を取り出し、これで、転移の魔石と座標計算の魔石を接続する。転移の魔石の座標指定に、座標計算の魔石の情報をダイレクトに流す回路を作った。


 爆炎の魔石には、転移魔法をかけられてから、転移完了後に約0.5秒立つと封印した魔法を開放して爆散するように改造を施した。爆炎の杖として魔法を使う場合はレベル1程度を開放できるだけだが、魔石を犠牲にして魔力を全開放すれば、レベル7程度の破壊力が出るだろう。


 これでギミックは完成だ。


 俺はアークドラゴンが眠っている広間の方まで行く。ドラゴンはまだ変わらず眠っている。


 広間の入口付近の地面に、即席で作った爆炎魔石転移装置を地面に置く。


 そして、一度深呼吸をして気持ちを落ち着けると、座標計算の魔石を指で触れ、爆発の目標とするドラゴンの頭をじっと見つめながら、座標計算開始の念を送った。


 1、2、3・・・・10秒ほどで座標計算が完了し、座標値が転移の魔石に流れ込んだ。


 そこで、俺は転移の魔石に指を触れ、転移魔法を起動した。


 転移の魔石に触れさせておいた、爆炎の魔石が瞬時に消える。


 と、その直後。ドカーンと爆発音がして、アークドラゴンの頭が爆散した!


「やった!」


 俺は、広間に入り、恐る恐るアークドラゴンに近寄った。


 頭部を失ったアークドラゴンは、床に倒れ伏し、身じろぎ一つしない。完全に死んでいた。


 俺は魔石採掘用のつるはしと、石でも切れるのこぎりで、アークドラゴンの腹を苦労して割いた。こんな道具を使っても、アークドラゴンの背中の鱗には全く歯が立たない。なんとか腹の皮は切り裂くことができたが、ぎりぎりだった。


 そして、アークドラゴンの腹の中で、銀色に光る龍魔石をえぐりだした。


「大収穫だ・・・!」


 他の鱗や牙なども貴重な素材なのだが、俺一人では持ち帰ることはできない。もったいないが、やむをえず、置いていくことにした。

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