第17話 風弾筒

 ポロックの家を辞した俺は、魔道具工房に帰り、早速、ポロックの弓矢を強化し、魔法弓並みの威力にする魔道具のアイデアを考え始めた。


 しかし、簡単には思いうかばなかった。行き詰まった俺は、とりあえず、一般的な魔法の弓矢が、どのような魔法原理で、威力を強化しているかを調べることにした。


 矢の方は、矢じりを鍛錬するときに魔法強化を施し、剛性を上げているようだ。


 それを打ち出す弓の方は、弦に魔法の張力を与え、引くときは軽く、弦が矢を放とうとして戻るときは何倍もの張力になるように、魔法弓のために特別に編み出された魔法で強化されているそうだ。


 魔法の弓矢は、長年の研究の成果で、その生成方法が確立しており、俺が魔道具で魔法の弓矢を作ろうとしても、同じことになってしまう。


 それだと、ポロックは受け取ってくれないだろう。


 いっそのこと、弓矢にこだわらず、それに準じる俺のオリジナル魔導武器のほうが、受け取ってもらえる可能性が高かった。


 俺は、矢を風魔法で空気を圧縮して発射する仕組みを考えた。鋼鉄で作られた筒の中に矢を込めて、筒の内部で風魔法を圧縮し、一気に膨張させることで、矢を放つという原理だ。


 この場合、弦を引く必要はなく、弓というか、発射筒の威力は、圧縮する風魔法の魔法レベルに依存する。


 矢も、矢じりの部分以外は必要なかった。矢じりを円錐形状に加工し、先端は突き刺さるように、後端は空気を受け止めるように工夫した。空気がもれないように、直径を筒の内径とぴったり同じにする。筒の中で魔法によって圧縮された空気が膨張するときに、筒の中に仕込んだ矢じり・・・風弾と呼ぶことにした・・・を超高速で押し出す。


 俺は、この武器の原理を「風弾筒」と呼び、鉄工職人と相談して試作を繰り返した。


 風弾は、筒の先からではなく、側面から装弾できるようにした。装弾してから、筒の側面のレバーで蓋を閉めて密閉するのである。


 構えて狙いやすくするために、筒の後端を肩に当てて固定できるように柄も取り付けた。狙いを確認しやすくするための、照準になる目印も取り付けた。


 風弾筒の威力は、空気を圧縮する風魔法のレベルに依存する。俺は、龍魔石を少し使用して、ポロック用の風弾筒に魔法レベル7の風魔法を封印した。


 なお、龍魔石を使わなくても風弾筒はレベル7で作成できる。ただし、その場合は、トリガー部分の魔石がかなり大柄になるので、少し使い勝手が悪くなる。龍魔石を使ったのは、俺のポロックへの感謝の気持ちだった。


 俺は射撃テストを行った。風弾筒の射程距離は150歩、そして貫通力は、ドラゴンの鱗を十分貫通するほどのものとなった。


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