第6話 ランドタートル

 ランドタートルは、巨大な陸生の亀で、頑丈な甲羅を持ち、剣や弓矢の攻撃も受け付けない。畑の作物を蹂躙していくので、農家からは死神のように恐れられている。


 そのランドタートルが、南の村に現れたらしい。畑が襲われる前に退治しなければならない。


 暴れたときの膂力も相当なもので、ベテランの冒険者が複数集まって、魔法の武具などを使い、ようやく倒せる強敵だ。


 だが、俺には転移爆炎弾があった。敵の体内に爆弾をテレポートさせる魔道具に対して、外部の装甲の硬さなど関係がない。爆炎弾を体内に数発打ち込めば、倒せるだろう。


 俺は村へと直行した。


 村で事情を聞くと、村外れの草原で目撃されて4日が経っているという。俺は村人をガイドに雇い、草原に行く。


「ほら、これがランドタートルの足跡だ」


 巨大な円形の足で、地面の草が踏み潰されていた。


「足跡を追っていけば、ランドタートルに接触できるかな?」


「ああ、でも、ランドタートル相手にたった一人で大丈夫なのかい?」


「いい魔道具を持っているんだ」


「魔道具ねぇ。魔導武器のほうがいいんじゃないのかねぇ」


 村人は俺の戦闘能力に対して疑いを持っていたが、俺はさっさと足跡を追って歩き出す。


 2時間ほど、足跡を追っただろうか。遠くに、巨大な甲羅のシルエットが見えた。俺は遠見の魔道具を取り出して確認する。間違いない、ランドタートルだ。


 転移爆炎弾は、巨大で鈍重なモンスターほど相性がよい。遠くからよく見え、狙いを定めるのが容易だからだ。俺は遠見の魔道具を使って、遠距離攻撃することにした。


 頭を狙いたいところだが、草に隠れて、頭までは見えない。仕方がないので、甲羅の内部の腹を狙う。


「転移爆炎弾・・・!」


 俺の右手のひらから、爆炎の魔石がテレポートし、ランドタートルの内部から、ドンという音がした。


 一発でも十分かもしれないが、念の為、あと2発ほど放り込んでやることにする。腰のポーチから新たな爆炎弾を手のひらにすくい上げ、テレポートさせる。


 ドン、ドンとさらに2発の爆発音が鳴り響いた。俺はじっと様子を見るが、ランドタートルはもう動かないようだ。


 俺はランドタートルのところに歩いて、確認をしにいった。ランドタートルは表面上は無傷だが、口から血を吐いており、転移爆炎弾で内臓を破壊されたことが見て取れた。


 俺は村人を呼びに行った。村人は、ランドタートルがいともあっさりと倒されたことに驚いていたが、それ以上に、畑を荒らすモンスターの脅威が去ったことに喜んでいた。


 冒険者ギルドに報告が行き、素材回収の人手がやってきた。ランドタートルの甲羅は、防具屋などに回されて、強力な鎧や盾の材料となるようだ。


 俺には冒険者ギルドを通じて、4000万ゴールドが手渡された。


 これで、生産自動化ゴーレムを購入できる。

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