第3話 転移爆炎弾

 アークドラゴンの龍魔石を、俺は工房に持ち帰った。


「アンディの魔道具工房」という小さな店だ。正直、たいしてもうかっていない。


 俺は持ち帰った龍魔石をゆっくり眺めた。なめらかに銀色に光る魔石はとても美しい。大きさは拳大だが、そこに秘められた魔力は尋常ではない。


 俺は、この龍魔石で、どんな魔道具を作ろうかと考えた。売り物にする気はない。これほど貴重な魔石なので、俺のシンボルになるような特別な魔道具を作ろうと思った。


 普通に、爆炎の杖のような攻撃魔法を封印した杖を作っても良いだろう。龍魔石なら、「爆炎の杖 レベル7」が作れるかもしれない。最高レベルの爆炎魔法を無尽蔵に連射できる、超強力な魔法の杖ができる。


 しかし、俺は、アークドラゴンを倒した、爆炎の魔石を転移させて、敵の体内で爆発させる魔道具が気になっていた。


 あの術式を、この龍魔石で再現できないか?


 しかも、座標計算を動いている敵に対しても行えるほどに高速化し、転移魔法を使い切りでなく何度でも発動できるようにできれば・・・


 俺は、術式を紙に書き出し、必要魔力量を計算した。


 その結果、龍魔石の魔力量なら、爪の先ほどの大きさに加工しても、実現できることがわかった。


 そこで、俺は、拳大の龍魔石から、親指の爪ほどの大きさに魔石を切り出し、指輪に加工した。


 そして、アークドラゴンを倒した魔法の術式と同様のものを刻印する。術式は銀色の龍魔石の表面に、金色の文様として浮かび上がった。


 手のひらに握り込んだ石ころ程度のものを、自分が見つめた任意の対象の座標へと転移させる指輪ができあがった。


 ためしに外で、薪を空に投げて、手のひらに握り込んだ小石を空中を舞う薪の中に転移させてみた。落ちてきた薪を割ってみると、見事に、中に小石が埋まっている。


 成功だ。


 そして、店に在庫していた魔石のうち、低品質のものを用いて、全開放して爆散させたときにレベル1の爆炎魔法になる程度に、魔法を封印した。転移魔法をかけられると0.5秒後の爆発するようにした。これが弾丸になる。


 何個か作成し、郊外の森に出向いた。


 腕でひとかかえほどある木をめがけて、爆炎弾を、座標転移の魔法を封じた指輪を使って転移させる。


 木の幹の内部に転移させられた爆炎弾が爆発し、かなりの太さの幹を内部から破壊して、木が倒れた。素晴らしい威力だ。体の内部から、これだけの爆発を受けて生きていられる生物は、モンスターであってもそうはいまい。


 弾丸の方を「爆炎弾」、指輪の方を「転移弾の指輪」と名付けた。ふたつ合わせて使った場合の名前は「転移爆炎弾」である。要するに、爆弾を敵の体内にテレポートさせる魔道具だ。


 俺は、工房に戻り、爆炎弾を100個ほど作成した。


 それからちなみに、情報屋にアークドラゴンの遺体の場所の情報を売った。自分で残りのドロップ品・・・鱗や牙など・・・を取りに行くのは大変だと思ったからだ。


 残った龍魔石は大切に保管することにした。

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