こちらのお話を読んで、あの日の石巻で生き延びた友人の話を思い出しました。
漁船に乗っていた彼は、地震が起きてすぐ船のみんなと山に向かって「津波が来るぞ!!」と叫びながら走って逃げたそうです。
その姿を見てすぐ避難して助かった人も多かったのですが、途中で「何びびってんだよ、だっせえ」と笑っている中学生のグループに会ったそうです。
彼は気にせずそのまま走って避難して、無事でしたがその中学生たちは行方不明になりました。その後十年以上ずっと罪悪感に苛まれています。
天災といった人間のコントロールを超えた大きな力と言うものは常に存在します。
そして魔法であれ科学であれ、人間の技術、人間の制御できる力というものには限りがあります。
その中で思うに任せぬ現実に直面した時、どのように生きるか考えるきっかけになる良作だと思いました。
いきなり自分語りから入るのはあんまり好ましいことではないんですが、私は3.11の被災者なんですよ。でかい地震の影響をわりとそれなりに受けて、しばらくまともな生活は出来なかった経験があります。もっとも当作品の内容ほどではありませんでしたが。
この作品の注目すべきところは大きな災害にぶち当たって、そこからどう生き延びることが出来たのかというのが最大の見せ場でしょう。
私だって密接で何日も閉じ込められるようなことがあれば、例え同じ状況の人が周りにいたとしても発狂してしまうかと。何より作中のキャラクターと同じく、過去のトラウマを思い出してしまうからですねぇ。
話は戻って見せ場となる中盤の事件。この出来事自体がほぼ初めての者。過去の出来事を思い出して動けなくなる者。過去の経験を生かし冷静になれる者……それぞれがリアリティのある描写で描かれて大変見ごたえ有りけりです。ご興味が向いたのであれば是非とも一読をおすすめ致しますわ