第5話

 あれからその場を離れず、コンテナの陰に潜むこと約30分。

 遠くの方で爆撃による砂埃があったり、銃撃戦があったり。

 いずれも、生き残ったプレイヤーは私に近寄った時点で殺しておいた。

 はっきり言って、手ごたえが無い。

 これが最低ランクである白の戦いなんだから、当然っちゃ当然なのかもしれないけど。


 それはそれで、最初に戦った男は強すぎるんじゃないかと思う。

 私にかかれば大したことは無い。が、あいつが白程度の実力とは思えない。

 暇な30分間、殆どそれだけに思考をよこし、思いつく一つの結論。

 

 ――あいつ、特殊部隊だ。


 うん、そうとしか思えない。

 だとすると、私とあいつが出会ったのって、凄い確率なんじゃないかな?

 

 出会った時は噛ませ犬風な発言かましてたけど案外、世の為人の為に働く一員なのかもしれない。そう思うと、親近感が湧いてきた。


 あの発言はアレだ。


 娯楽の無い空間でトレーニングの日々を過ごしてきたからこそ、たまの休日で鬱憤を晴らそうとしたに違いない。

 あちゃぁ、話を聞くべきだったなぁ。

 

 独りでに後悔する私を他所に、遠くからは一際大きな爆発音が鳴る。


《Victory!》


 視界いっぱいのに金字が現れ、私はビクリと肩を震わせた。


 ふえ……?

 Victory……ビクトリー……勝利……。


 何か勝っちゃったけど……なるほど、最後の爆発でプレイヤー同士が相打ちしたのかな?

 いやまあ、それはそれとして、


 私、運良過ぎない?

 転送地点が良かったし、しめつけに最後の相打ち。

 なんか笑いがこみ上げてくるや。


 運も実力の内と喜ぶべきなのかな。

 それにしたって、四人くらいしか倒してないけど。



〈Rank in Bonus「+30p」「+100c」〉

〈Kill Bonus「+8p」「+4sp」「+40c」〉

《toa「38p」「4sp」「1140c」》



 おお、報酬かな?

 色んなポイントが……や、ややこしい……。


 整理してみよう。


 え〜っと、Rank in Bonusランクインボーナスだと、『p』ポイントを30p、『c』コインを100c。

 Kill Bonusキルボーナスでは、8p(キル数×2p)と、『sp』スペシャルポイントを4sp(キル数×1sp)と、40c(キル数×10c)、……ってことになるのかな。

 

 ランクごとに報酬も変わるだろうけれど、今はこれだけ手に入れられたことを素直に喜ぼう。

 やったね!

 

《ロビーに戻りますか?》


 あ、はい、戻ります。






 ロビーらしき場所に転送されたと思ったら、今度は喧噪がお出迎えだった。

 それもどうやら、私に向けられているようで。

 男女問わず、

 

「凄かったぜ!」

「本当に初心者か?」

「フレンドになってれませんか!」


 とか聞こえてくる。

 それには、


「あ、はい、どうも……」


 と返すことしかできなかった。

 別に人見知りとかじゃないよ。ただ、こんな何十人に囲まれでもすれば、誰でもこうなるって。


 しかしなぁ……今のは手ごたえがあまりにも無さ過ぎた。

 強いて言えば、あの噛ませ犬さんだけだった。私を楽しませてくれたのは。

 あ、もしかしてこのロビーにいたり……だとしても、見つけられる気がしない。

 む。それなら、もう一回戦地に赴けば、あわよくば噛ませ犬さんにまた会えたり、そうじゃなくとも、強いプレイヤーと戦えたりするんじゃ!?


 よーし、そうと決まれば再出陣だー!

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