第9話

 今の人、すごく弱かったなぁ。

 ま、皆そんなものなのかな。


 ここはゲーム。たとえ死んでも、リアルで死ぬはずがない。


 そんな世界で、私のようにプレイしている人の方がおかしいんだ。

 一戦目の自衛隊のプレイヤーだって、同じ自衛隊でも、自衛隊のような心構えは無かったように思える。

 あったのなら、あんな大声で笑いながら敵に接近したりはしない。

 そもそも自衛隊なのかすら知らないけど。


 あの人は、ゲームの中で戦っていたんだ。

 

 ま、だからなんだよ。って感じだね。

 人には人それぞれのやり方がある。そういうことだ。私は私なりで!

 さて、そろそろ20分が経過するね。気を引き締めないと。




          * * *




「ねえちょっと、あいつ死んだんだけど?!」

「……そうだな」


 モニター越しで、ヒソヒソと話す小柄な少女。

 対し、無関心に相槌をするのは、無愛想で大柄な男。


 並ぶことで身長の差が顕著に表れているその二人は、つい先程、toaという女プレイヤーの手によって呆気なく殺されたプレイヤー、『アロガン』を監視していた。


「そうだな、じゃないよ!」


 周りの目を気にしながら、声を潜めつつも少女は怒鳴る。


「あいつ、養成機関じゃトップクラスに強いって言ってたじゃん! それが何? あの失態は? 一般人に負かされてんじゃん!」

「アロガンは、自身の強さに自惚れている節がある。たかがゲームだと高を括っていたのだろう」

「ハッ、なんだそれ。世界一の情報屋が、聞いて呆れるわ」

「……そうか」


 その一言で、痺れを切らした少女が、男の足を勢いよく踏みつける。


「こんのがぁっ!」


 暫くの間ガン、ガンと、何度も踏みつけられる男はというと、未だ巨大モニターからは目を離さない。

 まるで痛みを感じていないかのように動じない。


 頑丈な足を踏みつけるのに飽きたのか、少女は最後に、男の脛を蹴り、大きな溜息を吐くと、「もういい」と小さく呟く。

 蹴られた当の本人は、流石にその表情に痛みを浮かべていたが、少女が気づくことは無かった。




 やがて、モニターに《toa WIN!》とアロガンを倒したプレイヤーの名前が映ると、少女は「行くぞ」と恨めしそうに言う。

 男は「あぁ」と返し、大人しく付いて行った。



「――あんのバカ女、帰ってきたら殺してやる」


 そんな物騒な発言も、さほど気にしていないようだった。

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ガンライフ・オンライン 蒼乃 夜空 @aono_yozora

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