第7話

 私に気付かず、目の前を走って通り過ぎようとする男の右足を撃ち、男は地面に倒れる。

 男に止めは刺さず、すぐさま男が逃げて来た方向に銃口を向け、対象のもう一人の男の左足に発砲。

 その後、倒れ藻掻く二人の頭を、順に発砲した。



《Victory!》


〈Rank in Bonus「+30p」「+100c」〉

〈Kill Bonus「+14p」「+7sp」「+70c」〉

〈Item Bonus「+1sp」〉

《toa「82p」「12sp」「1310c」》



 換算されたポイントが映された画面を消し、私は再びロビーへと戻った。

 転送された私を迎えたのは、またも喧騒。


「フレンド登録しようぜ!」

「おめえすげえな!」

「ねえ、チーム組まない?」


 さっきから同じようなことばかり言われている。

 ただ、この数の顔を見ても噛ませ犬さんは見つからない。残念。


 はぁぁ~……私、もっと強いプレイヤーと戦いたいよぉ……。

 手っ取り早く強いプレイヤーと出会う方法、何か無いかなぁー……。

 もしくは、私が強くなってランクを上げれば良いのかな。


 ん? 


 あ、ランク! そうだ、ランクだ!

 ランクが高いプレイヤーは当然強いでしょ。

 その高ランクと対戦する方法、それは――


「私がランクを上げればいいんだ!」


 そうだよ、それが一番手っ取り早いじゃん。

 何で気付かなかったんだろう。自分でも不思議なんだけど。

 でもこれで解決したね。

 強者と戦うためには、勝ちまくって、私が強者になれば良い。

 至極当然!


「そうと決まれば、もう一回」

「ちょっと待ったぁぁあ!」


 ロビーを出ようとガラス扉の取っ手を掴んだ腕を、更に勢いよく掴まれた。しかも怒声付きで。

 驚いて、その人の顔を凝視する。


「え、誰ですか? ちょ、離してください、キモいです」

「んなッ!?」


 その女性に、咄嗟に抵抗の声を発してしまう。

 しまった、初対面の人にキモイとか言っちゃった。という後悔の気持ちが湧き起こるけど、相手が変人だということで、すぐに治まった。

 驚きか、それとも羞恥や怒りなのか、どれだろうと私には関係ないことだけど、ともかく女性は私の手をパッと離してくれた。

 ただの人違いで私の腕を掴んだのだったら、流石に言いすぎだったかも知れない……ごめんなさい、名も知らぬ変人さん。


 私は逃げるようにしてロビーを出て、早足で同じ建物内の別施設へと向かった。




          * * *




「ふ、ふふっ」

「笑いごとじゃないです」

「ごめん……くふっ」

「オカさん」


 何度言っても笑うばっか。

 ごめんごめんと言いながらも、やっぱり笑ってる……。

 何。そんなに面白かったかな?

 私としては、今にもブチギレそうなんだけど。


「ふー……。――ご、ごめんね?」


 今度はちゃんと、落ち着いてくれたみたい。

 とは言え、まだ頬がピクピクと動いてるけど……。


「ほんとなんなんですか! 勝手に行動して、二戦もして、また行こうとして」

「ふっ……ふふっ」

「挙句の果てには、人の話も聞かずに『キモい』って!」

「ふふっ、あはっ、ははっ……あははっははっ」


「オカさん」


「はい、ごめんなさい」


 怒りを露にする私と、笑いを堪えられないオカさん。

 そんな私たちがいる、白の観戦ロビー。

 中央天井にある大きなモニターに、一人のプレイヤーが再び映り、ロビーのプレイヤーは歓喜を示した。


 ただ一人、そのモニターを睨むのは私だけ。

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