第4話
まず一人を倒した。
ガッツポーズをして私は元の位置に戻る。
さっきの男のおかげで、あの家にはもう人がいないことがわかった。
だけど不利益もある。
今の戦闘で、男はかなりの銃撃をした。当然銃声も響く。
このコンテナの反対側から、その音を聞いたプレイヤーが駆けつけてきたり、グレネードを投げ込んでくるのがいるかもしれない。
そう考えると、今の状況はかなり危険。
だけど、それ以外は比較的安全である。運も良いし、初戦から好成績あるかも! なんて。
私は顔をにやつかせて、コンテナの陰に暫く潜んだ。
* * *
もうっ、これだから桐花は!
昔っからそうだった。外見は大人しそうなくせに、ちょっと厨二っぽい部分が性格の一部に紛れているんだ。
だから銃とか、とにかくかっこいいものにはどことなく惹かれちゃうのが悪い癖だ(なぜか男相手にはそうならないけど)。
中学の頃に自衛隊になりたいとか言い出したのも、かっこいいからの一言だけで、当時の私はめっちゃ呆れた。それを実現させたのには呆れを通り越して感心したね。
その性格を周りにだだ漏らすわけじゃないけど、興味があることには何かと理由をつけて行っちゃうんだ。ほんとっ、世話の焼ける親友だこと。
まあ今回は、事前に言っておかなかった私にも非はあるけど、それにしても――
「うわっ、すっげえなぁ……」
「あのルーキー、白狩りを初期銃で……」
「今の動きなんだ!?」
なんで先に遊んじゃってんのさ!?
いやいいんだけどさ! そのおかげで、観戦モニターで見つけることができたんだから良いんだけどさ!
にしても、いきなり自衛隊の知識を生かすのやめようよ……。
というか今の動き、完全に自衛隊のそれですら無かったけどね。
どうせ、アニメやドラマのなんかで影響されて、そういうことを体験してたんだろうね。
剣術教室とかそんな感じのを。
私も大分前に、そういう教室に一緒に行かされたっけ。
そう言えばあの時、レクチャーしてくれる先生と桐花がやけに親しかったのは……まさか通ってたからか! なんという本気度!
「おいおい、0ポイントの初心者が白狩りを倒したって?」
「マジで!?」
さっきモニター越しに映った桐花の話題は、このフロア中に風のように流れていった。
それもそうだ。なにせ、白狩りというのは、それほど厄介なプレイヤーなんだから。
白狩り。またの名を初心者狩り。
そう、初心者を狩るんだ。
どのゲームにも一定層はいる厄介プレイヤー。
このゲームはポイントで色が決まって、その色で相対するプレイヤーが決まる。
ポイントは、好成績だと増えて、低成績だと減る、ありがちなシステム。
上級者プレイヤーはそのシステムを利用して、あえて自身の色を白に下げ、白プレイヤーしか参加できないはずのバトルに潜り込み、簡単に好成績を出して報酬や称号を得る。もしくは優越感に浸る。
でもそれだと、桐花も白狩り扱いされかねない。何せ、元自衛隊なんて職業柄、ある意味上級者なんてものを越えてるんだから。
そうされていないのは、ランクポイントと総ポイントで分けられているから。
ランクポイントとは、戦って、減ったり増えたりするポイント。そのポイントで色が決まる。
総ポイントとは、今までに獲得したポイントの合計値。ようは、これが高いか低いかで白狩りかどうかを見極める。のだけど、今さっきの相手の公開されている情報によれば、最高ランクは紫。中々の上級者で、白とのランク差はだいぶある。ありすぎる。
それを、総ポイント数0・最高ランクは白の桐花――いや、
それは、観客の中には「こいつ特殊部隊なんじゃね?」って冗談交じりで疑う人もいるくらい、凄かった。
実際、その通りなんだけど。
そんな私は、どうやってトアを桐花と見極めたのかと言うと――
桐花のアバターさぁ、自分の顔、そのまんますぎる。
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