天正十三年、ある若武者が一人の女抜け忍を庇った。その武士の名は新三郎。刀も満足に振るえず、それを恥じるどころか算盤を弾くことを生きがいとする若武者。そんな彼に呆れながらも惹かれていく楓は、代わりに刃となり影となり、その志と夢の道を切り開いていく。豊臣政権の台所を支えた賢臣、長束新三郎正家。自らのやり方で彼に寄り添い、裏より支え続けた元甲賀忍、楓。そのふたりの生涯を描いた本作は、短編ながらも、大河スペクタクルを見終えたかのようなすっきりした読後感と満足感を得られる、情緒の深い良作です。
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