なぜ

 わたしはんでいるのだろうか。


 老いというものかもしれない。そう思う。

 このところ、以前とは違い、時間いっぱい動き回ることができない。早々に谷を見下ろす崖に立ち、腕の中の残骸を投げ入れては立ち尽くす。

 そして大木の根っこの寝床に帰る。

 眠る前の時間を、ぼんやりと過ごす。


 わたしは、わたしがどれほどの年月を生きているのか知らない。

 またわたしは、わたしが生きているのかどうか知らない。

 わたしはこの木炭色の森と無彩色の谷のことしか知らない。


 やがて、わたしは見ようとしている。

 谷だけ色が薄いのはなぜなのか。

 この谷には、何があるのか。


 わたしは何かを見出そうとしている。


 


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