閉幕
Epilogue 『平穏の始まりと悪夢の終わり』
ヘリコプターは小高い丘の上に着陸する。中から降りてきたのは実況のシンザブロォと解説のランドに、カメラマンとADの計4人だ。シンザブロォは【Roster No.7 3rd ClassB StarS】のナカハラが中でうずくまっている車のドアをコンコンとノックして、ドアを開けさせる。
「おめでとうございますー!」
二人に拍手で迎えられ、困惑しているナカハラ。
カメラがその表情をアップで映す。
「終わったんですか……?」
「終わりましたよ! 優勝ですよ!」
「ほらほら、もっと喜んでくださいよぉ」
ランドに煽られ、ようやく笑顔のようなものを浮かべるナカハラ。
「優勝、優勝か」
しかしながら、倒れているゲーム仲間が視界の隅に入ってしまい、カメラに背を向ける。
「優勝したナカハラ選手には、賞金として一億ドルが贈呈されます!」
ADが額面一億オーストラリアドルが印字された板をランドに渡し、ランドからナカハラに贈られた。
シンザブロォに「ほらほら」と身体をくるっと回転させられて、受け取らされる。
円ではない。
「と、いうことは?」
「そうです! 世界大会は太平洋に造られたヘルモラエヘロデル島で行われます! 最寄りの国が南半球はオーストラリアとなりますので、賞金はオーストラリアドルとなりました!」
「オーストラリア! いいですねぇ!」
世界大会。
各地域でのデスゲームの優勝チームを一箇所に集め、世界王者を決める大会が半年後に行われる。
この『ウランバナ島のデスゲーム』は、日本代表チームを決めるものでもあった。
「ナカハラ選手、世界大会への意気込みをどうぞ!」
「世界大会ぃ!?」
「あれ、聞いてませんでした?」
「俺は、ただ、ゲームがしたかっただけで」
ナカハラは、モバイルFPSゲームの大会と勘違いして『ウランバナ島のデスゲーム』に参加してしまった男である。
だが、この『ゲームがしたかっただけ』という言い回しは、あらぬ誤解を招いた。
「ランドさん聞きました!?」
「これが日本初の公式大会を勝ち残った男の言葉ですよ!」
「いやあ、半端ないですね!」
「世界大会での活躍に期待が膨らみますねぇ!」
慌てて「違う! 俺は世界大会なんて出たくない!」と訂正しようとするナカハラだが、中継画面から世界大会の説明に切り替わっている。
合計25の地域から、4人ずつの1チームで100人のデスゲームが、半年後に開催される。
日本代表のナカハラは、この半年間で3人のチームメンバーを集めなくてはならない。
「殺し合いなんてもうしたくない!」
「公式チャンネルにて、半年間、世界大会に向けたナカハラ選手の動きを密着させていただきます!」
「毎週金曜日に公開されますので、乞うご期待!」
「嫌だ! 俺は参加しない! 賞金は返す!」
「それではみなさん、また半年後お会いしましょう!」
「「さようならー!」」
【Fin.】
僕の家の周りでデスゲームが開催されている件 秋乃晃 @EM_Akino
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