いつ見きとてか恋しかるらむ

レビュータイトルは百人一首にも収められている中納言兼輔の和歌「みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ」より引用させていただきました。素晴らしい現代語訳はたくさんあるので各自調べていただいて、掛け言葉などを無視したざっくり翻訳でお送りしますと「見たこともない人に恋をしてしまった」という和歌でございます。上の句の描写も相まって、三十一文字でこんこんと湧き上がる恋心を表現した美しい和歌です。

このように見たことのない人に恋をする、ということはけっこう歴史があるものなのですが、そこにインターネットが関わってくる、というのがなんとも現代的。ですが時代は移ろえど、変わらないものは恋心なのかもしれません。カクヨムユーザーなら手に取るように理解できるであろうインターネットのリアルな描写と瑞々しい恋の表現が不思議とマッチして、爽やかな読後感が魅力です。

幾つもの時代を経て変わったもの、変わらないもの、そして何より刺激ある恋愛小説が読みたい方へ、オススメです。

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