ー 性格とその背景 ー
大きな特徴として常時敬語で話すが、どんなに怒ろうと、語気が強くなることはあっても言葉が荒くなることはない。彼の話し言葉の脳内辞書に「〜じゃねえ」のような崩れた表現は存在しないのだ。
とはいえ、それは育ちの良さの表れであり、性格としてさほど優等生タイプであるわけではない。
勉学も気が乗らなければサボり、蟄居の身にも
大国の王族、それも高い継承順位を持つ身でありながら、周囲――大主教や各種講義の教授、剣の師など――からしょっちゅう説教されるが、ごく自然にそれを受け入れている。
幼少の身で領主となった彼は、年長者や先達に敬意をもって接するよう、母からよくよく言い聞かされていたため、そういったことに抵抗が無い。
なお、敬語で話す癖がついたのもわずか六歳で領主となり、大人の上に立って領事に関わるようになったことがきっかけであった。そのため、幼い頃に知り合った同年代の相手――従弟の王太子ソレルやその婚約者の姫、またアルテミジアなど――に対しては敬語を使わずに喋る。
剣の師ではあっても破門され、既に師弟関係は解消されているリエール卿からも変わらず「お前」呼ばわりされているが、まったく気にかける様子はない。むしろこのように接してくる相手が本来ならどれだけ貴重か、彼は重々承知しているのだ。
忍びであろうとどこへ行っても丁寧な口調を変えないので、即座に育ちの良さがバレる。それを見たリエール卿から「お前は馬鹿なのか」と突っ込まれるものの、頑なに変えようとしないのでその点については諦められている。
もっとも、彼の外見が明らかに平民とは一線を画した整い方をしているので、言葉遣いだけを変えたところであまり意味は無いとも言える。
市井における物価の相場もある程度教えられているため、彼を世間知らずな坊と舐めてかかってきた相手に法外な金を巻き上げられるといった事態は、自身で回避が可能。
そのように普段の彼は至って鷹揚で温厚、冗談も言い、ごく普通で無害な若者に見える。しかし見た目や物腰に騙され、迂闊に敵対してくる相手には容赦なく鉄槌を下す。それは気の強さの表れというだけではなく、やられた場合に黙って引き下がることは立場上、許されないという事情があるからで、それだけに反撃は徹底している。
傍系とは言え生まれながらの王族であり、ことによっては現王太子を追い落とすことも可能と見られる血統であるため、周囲からはかなり丁寧に扱われ、育てられた。
そのために公人・王族としての強固な自覚が彼の根底を為している。
両親の死、自身の蟄居処分とそれに伴い被った汚名、また政略で非公式に縁を結んだ幼馴染の姫の死といった過酷な体験を経てなお、自身に課せられた王侯貴族としての責務を放棄したいとは考えない。ラヴィッジ伯であること、ソーン伯であること、更には王家アイブライトの一員であることは彼のアイデンティティであり、その地位や血統と自己は不可分なのである。
周囲から愛情を注がれて育ったので基本的に情は深く、世間一般における良識や倫理が思考に強く根差しているが、立場上、そこから外れた行いを求められる場合もあるということも理解しており、それを実行する冷徹さ、柔軟さも持ち合わせている。
清濁併せ呑むことができるのも彼の強さの一因であるが、そこには彼の父親の性格とそれによって引き起こされた事態から、周囲が「同じようになられては困る」との想いで彼に施した教育の賜物であった。若干それが行き過ぎたきらいはあり、当人の内面が、良識に引きずられる感情と、権力闘争を生き抜くための理性とに分裂しかけている。
その一端として、感情にせよ立場にせよ、非常に割り切って物事を考えるたちである。
好悪の感情で言えば彼は敵対勢力の中に親しみを感じる相手が多く、政治的には味方であり守る対象であるはずの自陣営にこそ憎むべき相手・こちらを敵視してくる相手が多いため、行動に感情を割り込ませていては立ちゆかない。
その割り切りの結果、政敵としてこちらの命を狙い続ける相手であっても、その性格が好ましければ心を開く。
心は開くが、どうしても互いの命が両立しないとなれば相手を消すことも辞さない。感情と行動が完全に不一致になるが、彼なりの優先順位に従った結果の行動であり、本人は至って正気のつもりである。
しかし、さすがに割り切って置いてきぼりにした感情を処理しきれなくなり、突然単身荒野に踏み入れて死にかけるなど、後で聞いた周囲が蒼白になるようなことをやらかす場合もある。
***
以上、ヴィーについて好きなだけ語ってみました。
まだ本編が追い付いていないので伏せている事案もありますが、キリがないのでそろそろこの辺りで……。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます。
また、このような機会を作ってくださった企画主の南木様に感謝申し上げます。
ヴィーってなんなの? ~書き過ぎキャラクター紹介~ Skorca @skorca
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