千年もの間、密やかに保存された禁書——世界を治める帝国に滅ぼされた「餌」の国の言葉の書物を集めた古書店とその店主ドレイク。
彼の店の常連客、ルーシは淡い金の髪に空を映すような青い瞳を持つ美しい青年です。古色蒼然とした店にはおよそ不似合いなその青年は、大金を費やしてその禁書を買い求めるのですが、何と彼は帝国が信奉する神に仕え、『餌』を狩る役割を担った「『餌』狩り」の神官で——。
神の力、呪符といった魔法が確かに存在しながらも、それを行使する人と人との争い、信仰、盲信といった人の業そのものが、かえって鮮やかに浮き彫りになっていきます。
神にも近いその力を振るうためには互いを必要とする「両翼」の二人、容姿は同じでも、神への信仰も考え方も違う二人のありようと、それを眺める飄々としているように見えたドレイクの、あまりに重い過去と彼が担う古書店の役割。
一万字弱とは思えないぎゅぎゅっと濃い物語でした。別のシリーズとも繋がっているようなので、そちらの展開も楽しみにしつつ、こちらも続きが読みたい!!と思ってしまう珠玉の一作。
おすすめです!