第4話 沙優は男に抱かれると言いたくなかったのか?

 あくまで私の解釈であり、解釈は読者それぞれで違う解釈があることを念頭に読んでください。

 二次創作を執筆するにあたり、私が採用した解釈というご理解をお願い致します。

 https://kakuyomu.jp/works/16816452221235522440/episodes/16816452221283798850

 今回は第3話 宿代 後編からの分析です。



 <沙優は男に抱かれると言いたくなかったのか?>


 沙優は吉田から「上手いことやるって、どういうふうにだよ」「俺が追いだしたらどうするつもりなんだ?」「どうにかって、具体的には?」と問い詰められた際、「身体を許して泊めてもらう」と返すことが出来ませんでした。

 漫画版では沙優は辛い表情をし、何も返せないことに対して、吉田から「言いたくないことをやるんじゃねぇよ」と言われています。この吉田の台詞は、吉田の主観ではなく、沙優の心情の表現でもあるかと思います。

 そして原作1巻末(293頁)でも、沙優は男に抱かれていたことは自分の口からは言えず、吉田に言わせています。それぐらい、自分がやってきたことに嫌悪感があったと読み取れます。


 しかし私はこの解釈と、沙優の「吉田を何度も誘う」という行為は矛盾すると判断しました。

 もし仮にそこまでの嫌悪感があるなら、吉田を試すためであっても誘ったりはしないでしょう。恩返しの方法が自身の身体しかないと思っていたとしても、嫌悪感の方が勝っている中では、誘うことはできないという解釈です。

(沙優は抱かれることに嫌悪感はありますが、やむを得ないと割り切っていたというのが、私の解釈です)

 

 また吉田の沙優に対する「甘ったれた根性」という解釈もおかしくなります。吉田は沙優に対して「甘ったれた根性だから、他の方法もあったはずなのに、抱かれるという安易な手段を選んだ」という理解をしていました。これが自分の口から言い出せないほどの嫌悪感があるのだとしたら、吉田の解釈は的外れもよいとこです。


 以上のような矛盾を解決する解釈を、私は原作準拠では思いつきませんでした。

 そこで、沙優は吉田の言いたいことの趣旨を理解し、その趣旨に対しての返事ができないため、沈黙したという解釈に変更しました。

 吉田が言いたいこととは、「他にも手段があるのに、どうして身体を使う道を選んだか」です。沙優の身体に興味がない男相手には、沙優の選んだ手法は通用しませんよ、と言葉と態度で示しました。これが理解できていたから、沙優は沈黙したんだという解釈です。



   <沙優は男たちに甘えてきたのか? 甘ったれなのか?>


 吉田のそものもの性格は「自分勝手な正義感を押し付ける」というタイプ(しめさば先生談)らしく、甘ったれな性格という沙優に対する分析も、自身の価値観に基づく偏見だと思われます。これは沙優は他に手段がなく嫌々ながら抱かれてきたことを考えれば、「男たちに甘えてきた」「甘ったれた根性」ではないことは明らかです。


 

   <沙優は何に対して怒り、どうして涙目になったのか?>


 沙優は吉田に対して怒りますが、反論しようとして止めます。直前の吉田の台詞は「お前の何かなんていらねぇんだよ。くだらねぇ。お金がない、住む場所もない、じゃあ男を誘惑しよう。とかいうバカ極まりないお前の思考を叩き直してやる」です。

 沙優からすれば誘いたくて誘ったわけではないので、酷い言われように感じたのでしょう。これぐらいしか怒るポイントはない気がします。


 そして涙目になった理由は、沙優が甘ったれた性格だからというのが原作準拠の解釈かなと思うのですが、私は沙優は甘ったれではないと思っています。

 沙優が北海道に帰る頃には、沙優は虐待の影響から脱した本来の自分を取り戻していると思うのですが、どちらかというと芯のあるタイプで、根性のある性格をしている感じを受けます。それに地が甘ったれの性格だとしたら、親からの虐待を耐え続けて、頑張って生きることができるのかという心配もあります。

 だから私は甘ったれだから涙目になったのではなく、嫌味やヒステリーではない、初めて自分のことを思っての叱りだったから涙目になったのだと解釈しました。



*第2章の分析は、第3章が終盤まで進んでから行います。(ネタバレ回避のため)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

書籍化作家が「ひげひろ」を分析してみた 水鏡 智貴 @MIKAGAMITOMOKI

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ