第37話

「バンバラ随分な姿になったね」

「えぇぇいい!黙れぇぇぇぇぇぇえええええ!お前のようなクズにこの動きについてこれるかぁぁぁぁぁぁあああああああああ!」

 バンバラは下半身から放出した蜘蛛の糸を使って、図書室内を縦横無尽に駆け回る。

 ふむ。

 なかなか早い。だけど、僕と戦うにはあまりにも遅すぎる。

「アハハハ!死ねェェェェェエエ!」

 声を上げて僕の背後に回ったバンバラが飛びかかってくる。

「遅いよ」

 僕はその一撃を避け、僕の背後に回ったバンバラの背後を取ってやる。

「なっ!?」

「えい」

 僕はバンバラを思いっきり蹴り飛ばした。

「ふぅー、バンバラ。汝は十戒が一つ に反した」

「は?」

「よって汝を背教者と断ずる」

 僕は断罪の大鎌を顕現させる。

 この大鎌は物理試験のときに使った大鎌とはまた別の。

 僕が異端審問官として戦うときのための武器だ。

「正義を執行する」

「何が正義だァァァアアアアアア!へい」

「吠えるな『デスサイズ』」

 僕は魔法を一つ。

 発動させる。

 断罪の大鎌が紫色の魔力を纏う。

 そして、バンバラに向けて一振り。

 『デスサイズ』

 異端審問官『死神』の代名詞とも言える魔法。

 切れないという現実を改変し、すべてを切り裂けるようにする魔法。

 それだけでなく相手の魔力を殺すこともできる。。

 魔法は死魔法で殺せないが、魔力なら殺すことができるのだ。

「あ、あれ?」

 バンバラは困惑したような声を上げる。

 当然だ。

 僕の『デスサイズ』で魔力をすべて殺されたのだから。

「ほい」

 そしてもう一振り。

 今度はバンバラとつながっている別の誰かの魔力を殺す。

 ……魔力は覚えた。

 後はこの魔力の持ち主がどこにいるか。

 ……なるほど。そこか。よくもまぁそんなことを。そりゃ見つからないよ。

「ひ、ヒィィィイイイイイ!」

 別の誰かの魔力も殺された結果、バンバラの体に大きな変化があった。

 化け物のような体から元の体に戻ったのだ。

 だが下半身はなく、背中にも穴が空いている。

 一応止血はされているようで大量出血死することはないようだ。

 バンバラの体は別の誰かの魔法によって変えられていただけに過ぎず、その魔力が殺された結果、魔法が解けるのは自明の理であった。

「や、やめ。こ、殺さないで」

 ここでようやく彼我の差を理解したバンバラが情けない声を上げる。

「さようなら」

「やめて!」

 僕が手に持った大鎌をバンバラに振り下ろそうとしたその瞬間。

 サーシャが僕の背後から強引に動きを止めようと抱きついてきた。

「何?サーシャ」

「やめて!……やめてよぅ。私はノーン君が人を殺すところなんて見たくないよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る