第5話
「『ズドン』」
一筋の雷鳴が光り、そして鳴り響く。
僕の魔法によって放たれた一筋の雷鳴は的を確実に撃ち抜いた。
「は?」
困惑する試験監督を前に僕は次の魔法の魔法陣を一瞬で展開する。
「『爆ぜろ』」
轟音とともに広がるビリビリとあたりを震わせる衝撃波。
さっきまで的があった場所にはクレーターがあった。
僕が使った魔法は『エクスプロージョン』。
爆発魔法である。
魔力を込めれば込めるほどその威力を増し、逆に大した魔力を込めないと、さほど威力が出ないため、実にお手軽に様々な用途に合わせて使える便利な魔法である。
みんなも魔法を覚える機会があれば是非覚えてみてほしい。
便利だから。
「え?」
「『穿て』」
そして僕はそのまま最後の魔法を唱える。
膨大な魔力が蠢き、現実を改変する。
結果的に穴の空いた的だけが残った。
今のは僕のオリジナル魔法である『死魔法』である。
僕が何をしたのかと言うと、的に穴が空いていなかったという現実を殺し、的に穴が空いていたということに現実を改変したのだ。
さっきの僕の魔法のように現実を改変する魔法のことを現実改変魔法といい、超位級魔法に分類されたりする。
「あの……終わったんですけど?」
僕は呆然と的の方を眺めている試験監督の肩を叩く。
残念!
返事がない。ただの屍のようだ。
「あのー!」
僕はゆさゆさと試験監督の方を揺らす。
残念!
返事がない。ただの屍のようだ。
え?どうするの?これ?
「すまない!すまない!通してくれ!」
僕が途方に暮れていると奥の方から学園長がやってくる。
またあなたは!
僕らが頼んでいる仕事はどうなっているの!
職務怠慢だよ!
ほんとのほんとに処罰してしまうよ?
「おい!おい!」
僕のそばまで来た学園長が試験監督の頬を叩く。
「くそ!『正気に戻れ』」
学園長が試験監督に魔法を使う。
正気にもどれ?
学園長はなんでそんな魔法を?
一体いつどこに試験監督が正気を失う要素があったと言うのだ?
「はっ!何を!」
試験監督が正気から戻ったような声を出す。
あれ?なんで?
いつどこで正気を失う要素があったんだろ。
わからないなぁ。
「『土よ、隆起せよ』」
地面が盛り上がり、クレーターを埋める。
「『土よ、変化せよ』」
再び土が盛り上がり、盛り上がった土は的と同じような形をとる。
うん。
さすがに学園長なだけあって魔法の発動がスムーズだ。
「君はもう戻っていいよ」
「あ、はい」
僕は学園長に従ってサーシャの方に戻る。
「私、だめな子なんだね。……魔法には自信。……あったんだけどなぁ」
「ん?」
ぽつりと僕に隣に立ったサーシャが呟いた。
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