第4話

 僕が連れてこられたのは広い運動場。

 遠くに的が見える。

 第二試験は魔法試験。

 何メートルかはわからないけどパット見そこそこ近い位置の的に魔法を当てるのかな?

 試験監督が当たったかどうかだけでなく魔法の威力や速度も目視で確認して点数をつけるらしい。

 試験監督はダボダボの白衣を来た不健康そうな女の人だった。

 この人もそこそこ有名で優秀な人だ。

 確か以前にこの学園を主席で卒業した人だったはず。

 そしてなんと!

 ここでは僕、ぼっちじゃない。

 みんなと一緒だ。

 当然学園長もいない。

 試験監督が淡々と受験者に指示を出していく。

「ここで頑張らないと……!」

 僕の隣に立つサーシャが手を小さく握り、やる気を顕にする。

 どうやら筆記試験はだめだったらしい。

 よかった。筆記試験だめだったのが僕だけじゃなくて。

 そうこうして待っていると、サーシャの番になる。

「見ていてください!私、魔法には自信あるんです!」

 意気揚々とサーシャが試験監督の前に立つ。

「前に3つ的が見えるだろ?あの的に一発づつ魔法を当てていけ」

「はい……!」

 サーシャは自身の魔力を高めていく。

「第十一位階魔法『ファイアースフィア』!」

 サーシャの手のひらに魔法陣が浮かび上がり炎球が浮かび上がり、放たれる。

 放たれた炎球は的にぶつかり、的を燃やす。

「第十一位階魔法『サンダースフィア』!」

 次に放たれたのは雷球。

「ほう。二重魔力持ちか」

 試験監督が感心したようにつぶやく。

「第十位階複合魔法『ファイアーサンダー』」

 最後にサーシャが打った魔法は炎を纏った雷。

 サーシャの最後の魔法は的を派手に吹き飛ばした。

「うまくいきました!」

 サーシャは満足げに戻ってくる。

「よかったね」

「はい!次はノーンくんの番ですね!ノーンくんならきっと大丈夫だとは思うんですけど、頑張ってください」

「うん」

 僕は試験監督に呼ばれ、試験監督の方に向かう。

 ふむ。どうしようか。

 そもそも魔法とは本人の魔力である『グラ』を自然界に存在する4種類の魔力『デウス』につなぐことで魔法を使う。

 魔法の威力、規模は位階という区切りで事細かに分けられている。

 位階は全部で第十二位階〜第一位階。その上に儀式級、天災級、超位級、神威級と別れる。

 個人で使えるのは第一位階までとされていて、人間の限界は天災級まで。

 超位級と神威級は、伝説上の存在とされている。

 そして『グラ』を『デウス』につなぐために必要なのが魔法陣である。

 その魔法陣を描くためにはその魔法陣がどんなものか、わからないと描けないのである。

 そして僕はごく一般的な魔法陣を知らないのだ。

 僕が知っている魔法陣はどれも軍用。

 人を殺すためだけに開発された一般人非公開の魔法陣。

 それをこんなところで使うわけにも行かない。

 どうしたものか。

「おい、早くやれ」

 僕が悩んでいる間にも試験監督は僕を急かす。

 もういいか。

 悩むのも面倒。

 何か問題起きたとしても爺ちゃんのせいにしよう。

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