人間関係や家族関係に悩む人を、意外な形で後押ししてくれる作品です。

 母親に対する反抗心故に家を出て行ってしまったり、自由奔放な親友と自分を比較して落ち込んでしまったり、置いてきてしまった家族に対する罪悪感に苛まれたり……細やかな心理描写を武器に、自立したばかりの女性の不安や葛藤をありありと映し出す美しい文章表現に、終始驚かされてばかりでした。こんなの一体どうやったら思い付くんだろう? 
 描写が細やかである故に、主人公の気持ちの揺れ具合が読む側にもしっかりと伝わっていて、一度感情移入してしまえばもう離さないとばかりに、ラストまで主人公の気持ちにぴったり寄り沿いながら読み進めることができました。かく言う自分も、実際に社会人になって未だに親の元を離れられないこともあり、詩織の両親に対する思いとか、今の自分と重なるところが多くありました。だからこそ詩織の気持ちにより近付けたと思うし、バスに乗り合わせたおばあさんの言葉に、詩織だけでなく自分も少し元気を貰うことができたと思います。

 ……でも、それだけでは終わらせないところが、この小説の魅力。ラストで明らかになる真実に目から鱗が落ちました! この不思議な体験を是非、皆さんも味わってみては?

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