宇宙船の中で目覚めた少年『キョウ』。彼の生活は、毎日ちょっと船外に出かけて、この惑星に棲むモンスターと戦うこと。
そのサポートをしてくれるのはホムンクルスの『メロン』ちゃん。クールでツンツンしながらも、せっせとお世話をしてくれます。……そりゃあもう、多方面にわたって。
やがて他の船員たちも目を覚まし、彼らの活動の幅が広がります。モンスターを倒して経験値を稼ぎ、レベルアップしたり、武器と交換したり。レベルが上がれば、新しい施設が使えて、交換できる武器もより強力なものになる――まるでゲームのような世界。でもそれらにはすべて理由があります。
ところで、ゲームであれ、小説であれ、映画やドラマであれ……「架空」の世界にどっぷり浸かった後って、現実に立ち返った時にちょっと不思議な感覚になることありませんか?
見えている景色、動かしている自分の体……これって「本物」なのだろうかと。
この作品は、船に取り残された少年少女が遺物であるテクノロジーと関わり、未来を求めて懸命に戦う姿を通して、そんな「存在する」ということについて考えさせられます。
よく練られたプロットに、何気ない会話の中で投げかけられる哲学的な問い。
SFとして楽しむことはもちろん、深掘りして、頭を使っていろいろ考えながら読むこともできるような、深みのある作品です。
最後に一言……ツンデレが次第に崩壊していくメロンちゃんが可愛いw
目覚めたばかりのキョウに課せられたのは、惑星コルキスに跋扈する敵性生物の撃退だった。敵性生物を倒し、ポイントを貯めることで、新たな装備を手にし、レベルアップにより施設を拡張できるらしいが……。
アシスタントのメロンとの健全な医療行為による関係、徐々に目覚めつつある仲間たち、そして本船と『金色の羊毛』との因果とは――。
謎が謎を呼ぶ展開、頼れる仲間たちが増えることによって生まれる葛藤、そして、主人公自身の隠された過去を乗り越えた時、何が起きるのか。
ゲームのような進行、ほろ苦い青春、そしてミステリー。そのすべてを呑み込んで人類の未来を警鐘するSF群像ストーリー。
主人公の"キョウ"は記憶を失った少年。目覚めたとき、周りに他の人間はおらず、話し相手は人工知能の少女"メロン"のみ。どうやら場所は地球ではないらしい。置かれた状況に関する情報を得る手段は、その人工知能"メロン"の語る言葉のみ。キョウはメロンに言われるがまま、惑星に跋扈する生物を狩り続ける日々を送る──そんな状況から物語が始まります。
開始時点で主人公たるキョウが持っている作品世界の情報はほとんどなく、同じく何も知らない読者はキョウと同じ目線で作品世界を歩くことになります。主人公と読者が『本当のことは何も分からない』を共有する没入感の中で、作品の中に散りばめられた数々の謎、哲学的な問題、恋の物語を、主人公と一緒に経験する、というのが、この作品の与える体験です。謎めいた惑星冒険ものの世界に没入し、大きく展開する物語に翻弄されてみたい! という方は、ぜひ一度お手にとってみてはいかがでしょうか。
未知の惑星で記憶を失い、戦う理由もいまいちピンと来ないまま、やけに人間臭いAIのサポートを受けて幻想生物と戦う。
敵を倒して経験値を稼ぎ、経験値を消費して装備品の解放……と、まるでゲームのような状況。
冗談みたいなこの環境の中で眠る、「きょう」と「みらい」の真実は。
記憶の連続性や自己同一性といった要素にも踏み込む、哲学的なSFファンタジー……という一面もあるのですが。
小難しいわけではなくて、わりとギャグみたいな要素も多く。
登場人物みんなが個性的で、わやわややってるのを見るのが楽しい。
性描写有りタグは伊達じゃない……のだけど、エロスよりむしろシモネタ寄りかも?
ゆうべはおたのしみでしたね。
完結済み。衝撃の展開に頭がぐるぐるしたりもしたけど、おもしろいお話でした。
八十話まで読み進め中盤をやや過ぎたくらいでしょうか。一話毎の文字数のバランスが良く難儀なく読み進める事が出来る作品で御座います。
初めタイトルからゴリゴリのパイレーツ物を予想していたのですが、良い意味で裏切られ近未来的な現代のニーズを確実に捉えている作品に仕上げられています。ポイントで武器の調達とかは現代思考どストライクですね。
執筆者自体が物作りに精通しているのか、登場する武器武具も破茶滅茶ではなく、良い塩梅で地に足が着いていて好感が持てます。未知の力でドーン!ではなく、地道に進む戦闘シーンも必見です。
そんな作品の一番何処に近未来的価値を感じるか?其処は登場人物だと私個人は思います。個性豊かなキャラクターのチグハグな会話と距離感、そして食に対する異文化的混合。近近近未来的SFのような人間模様を、ぜひお手に取って楽しんで頂けたら幸いです。
主人公のキョウはロングスリープから目覚めてひと月足らずの少年。キョウをサポートするのは人工知能メロン、見た目はキョウとそう変わらない歳の少女です。
キョウはロングスリープ以前の記憶を喪失しており、目覚めたのちに知識・情報を得られるはずだった宇宙船のAIは故障により停止している始末。
地球外生命体が跋扈する未開の惑星で、AIメロンと2人きり。宇宙船にはキョウの他にも生身の人間が数人居るものの、しかし彼らは物語開始時まだロングスリープから目覚めていないのです。
記憶喪失だけでなく、周りに価値観を共有する「人間」が存在しなければ何が正しいのか……間違っているのかなど分かりません。
いや、共有する存在が居たところでその価値観が正しいかどうか決めるのは誰なのでしょうか。私達が保有している知識・情報は、本当に私達自身が積み重ねてきたものなのでしょうか。それを証明できるのはどこの誰なのでしょう。
そんな事を思わずにはいられない作品です。
――――と、何やら小難しいことをこねくり回しましたが基本的には軽快な会話とキョウのモノローグで物語は面白おかしく進みます。
次々に目覚める仲間達も個性豊かで面白いですし、パーティの中でそれぞれ役割が与えられていて凸凹ながらも上手く回っているというか……いや、問題の方が多いのかも?
作中の「医療行為」は何とも言えないアレがコレでソレがもにょもにょ……
そうしたジョークを散りばめながらも、どこか哲学的で考えさせられます。
私は本当に私なのでしょうか。今こうして文章を書いていることさえ、誰かに指令を送られて無意識の内に動かされているということはないでしょうか。
……いやソレだとまるで誰かにレビュー強制されてるみたいですね?!
とにかく百聞は一見に如かずと申します。ご自身の意思で読んで、面白さを確かめて欲しいと思います。
『人類の居住可能な惑星に降り立ち、敵性生物を駆逐して環境を整え、移民船団の本隊を迎え入れる』
それが先遣隊、本作の主人公であるキョウの任務です。
とは言え、個人的な記憶を失っているキョウにとって、与えられた情報の真偽を確認する手段はありません。
ちょっとコミュニケーションに難のある汎用人工知能ホムンクルスのメロンちゃん(自称/公称)から手取り足取り、放置されたり後出しされたりしながら、任務遂行にはげみます。
頼れる兄貴キャラだけにストイックでスパルタンなアリオ、キョウに輪をかけてインナースペースに迷う残念女子のエフテを始め、六人いるという仲間も徐々にそろいつつ、謎と疑惑も静かに降り積もる雰囲気が秀逸です。
人は、なにをもって自己を、自己たらしめるのか?
すべての情報が不確定性にかすむ時、現実は、なにをもって現実たり得るのか?
……なんて難しく考えなくても、モノローグのエア突っ込みだけが冴え渡るキョウと、イチャイチャ時々ギスギスな仲間たちが、とても魅力的です。
SF+ファンタジー+食レポ崩壊(?)フロンティアオデッセイ、乞う御期待です!