「存在する」とは何なのか

宇宙船の中で目覚めた少年『キョウ』。彼の生活は、毎日ちょっと船外に出かけて、この惑星に棲むモンスターと戦うこと。
そのサポートをしてくれるのはホムンクルスの『メロン』ちゃん。クールでツンツンしながらも、せっせとお世話をしてくれます。……そりゃあもう、多方面にわたって。

やがて他の船員たちも目を覚まし、彼らの活動の幅が広がります。モンスターを倒して経験値を稼ぎ、レベルアップしたり、武器と交換したり。レベルが上がれば、新しい施設が使えて、交換できる武器もより強力なものになる――まるでゲームのような世界。でもそれらにはすべて理由があります。

ところで、ゲームであれ、小説であれ、映画やドラマであれ……「架空」の世界にどっぷり浸かった後って、現実に立ち返った時にちょっと不思議な感覚になることありませんか?
見えている景色、動かしている自分の体……これって「本物」なのだろうかと。
この作品は、船に取り残された少年少女が遺物であるテクノロジーと関わり、未来を求めて懸命に戦う姿を通して、そんな「存在する」ということについて考えさせられます。

よく練られたプロットに、何気ない会話の中で投げかけられる哲学的な問い。
SFとして楽しむことはもちろん、深掘りして、頭を使っていろいろ考えながら読むこともできるような、深みのある作品です。

最後に一言……ツンデレが次第に崩壊していくメロンちゃんが可愛いw

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