SFだけでなく、哲学的な深みと厚みのある物語

主人公のキョウはロングスリープから目覚めてひと月足らずの少年。キョウをサポートするのは人工知能メロン、見た目はキョウとそう変わらない歳の少女です。

キョウはロングスリープ以前の記憶を喪失しており、目覚めたのちに知識・情報を得られるはずだった宇宙船のAIは故障により停止している始末。
地球外生命体が跋扈する未開の惑星で、AIメロンと2人きり。宇宙船にはキョウの他にも生身の人間が数人居るものの、しかし彼らは物語開始時まだロングスリープから目覚めていないのです。
記憶喪失だけでなく、周りに価値観を共有する「人間」が存在しなければ何が正しいのか……間違っているのかなど分かりません。

いや、共有する存在が居たところでその価値観が正しいかどうか決めるのは誰なのでしょうか。私達が保有している知識・情報は、本当に私達自身が積み重ねてきたものなのでしょうか。それを証明できるのはどこの誰なのでしょう。

そんな事を思わずにはいられない作品です。
――――と、何やら小難しいことをこねくり回しましたが基本的には軽快な会話とキョウのモノローグで物語は面白おかしく進みます。
次々に目覚める仲間達も個性豊かで面白いですし、パーティの中でそれぞれ役割が与えられていて凸凹ながらも上手く回っているというか……いや、問題の方が多いのかも?
作中の「医療行為」は何とも言えないアレがコレでソレがもにょもにょ……

そうしたジョークを散りばめながらも、どこか哲学的で考えさせられます。
私は本当に私なのでしょうか。今こうして文章を書いていることさえ、誰かに指令を送られて無意識の内に動かされているということはないでしょうか。

……いやソレだとまるで誰かにレビュー強制されてるみたいですね?!
とにかく百聞は一見に如かずと申します。ご自身の意思で読んで、面白さを確かめて欲しいと思います。

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