ゼロから紡がれる、生きる意味についての話

 主人公の"キョウ"は記憶を失った少年。目覚めたとき、周りに他の人間はおらず、話し相手は人工知能の少女"メロン"のみ。どうやら場所は地球ではないらしい。置かれた状況に関する情報を得る手段は、その人工知能"メロン"の語る言葉のみ。キョウはメロンに言われるがまま、惑星に跋扈する生物を狩り続ける日々を送る──そんな状況から物語が始まります。

 開始時点で主人公たるキョウが持っている作品世界の情報はほとんどなく、同じく何も知らない読者はキョウと同じ目線で作品世界を歩くことになります。主人公と読者が『本当のことは何も分からない』を共有する没入感の中で、作品の中に散りばめられた数々の謎、哲学的な問題、恋の物語を、主人公と一緒に経験する、というのが、この作品の与える体験です。謎めいた惑星冒険ものの世界に没入し、大きく展開する物語に翻弄されてみたい! という方は、ぜひ一度お手にとってみてはいかがでしょうか。

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