第2話 主人の栄養指導
1話目を書いたのがコロナの前。
まさかほんまになるとは思ってもいてへんかった。
主人ハジメの腎臓が悪くなって栄養指導に通っている。もちろん本人が。
食材・調味料を計って1日の摂取量を細かくチェックする。これも自分で。
月に一度蓄尿して検査をしてもらう。
蛋白・カリウム・塩分など。腎臓が悪くなるとこれらを体外に排出できなくなるため体内に遺る。
もともと食べることにあまり執着しないのが良かったのだろう。
透析にならないために頑張っているのだ。
オカンはこの食事療法を4年続けたがギブアップ。
っていうか「最初から透析しててもよかったんやけど、あんた自身を納得させるための4年間やったんやで」と医院長から告げられた。
その間、最後のパリ旅行にもして、こんなことなら腎臓病食のカップ麺など持って行かずに美味しいもの食べて来たらよかった。
ハジメは低蛋白のご飯をレンジでチンして、ジャガイモ・人参・玉葱を日替わりでカレー・ホワイトシチュー・ビーフシチュー・肉なしの肉じゃがをローテーションする。
それまで包丁も握ったことがなくても、やればできるんや。
そういえば私が料理してた頃もメニューに悩むと「カレー・お好み焼き・焼きそば・肉じゃがをローテーションしてくれればいい」と言われて驚いた。
私が嫌やわ。
ガス台が壊れて、主人の気に入ったガス台・食洗器を取り付けた。
賞味期限の過ぎた食材・調味料を処分された。
スプーンやフォークの収納の仕方に納得がいかない。うん十年とそれでやってきて使いやすい配置だったのに。
パスタを食べるのにどうしてフォークを発掘しなければならないのや。
オカンは去年に3回の入院してからこっち足が萎えて長時間の立ち仕事が難しくなった。手術をしたけど指先に痺れがある。おそらく頸椎から来ているのやろけど手術の後軟骨が飛び出してきて神経を刺激しているらしい。それを手術しようと思えばボルトを5本くらい入れなければならないと言われ逃げ帰って来た。
一時期冷凍のおかずを取り寄せていたけどそれも飽きる。
ハジメの買い物のついでにサンドイッチやらお惣菜をお願いする。
今日もキッチンから野菜を刻む包丁の音が高らかに響く。
城を明け渡しても城を守ってくれるものは現れるのだ。
【了】
妻の定年 オカン🐷 @magarikado
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