<第1話「俺のスキルは設計図」を読んでのレビューです>
冒頭から淡々と状況を説明する語り口で、物語は進みます。いわゆる異世界転生の定番を踏まえつつも、主人公の意識が幼児期から途切れなく描かれている点が特徴的で、説明的でありながら不思議とテンポが良い。幼少期の生活と世界の仕組みが、読者の目線にあわせるかのように整理されて提示されていきます。
印象的だったのは、「太陽が二つあったのだ。」という一文
過剰な装飾を避け、観察のように事実だけを示すことで、異世界であることの決定的な証拠を強く印象づけています。説明が続くなかで、この短い一撃のような断定は、逆に鮮やかでした。
物語の進行は軽快で、主人公の視点が常に読者を引き込みます。語り手の独白にユーモアが含まれているため、定番の展開であっても、退屈さを感じさせません。今後の展開に必要な「設計図」というスキルが提示されたところで、奇妙に広がる可能性を見せてくれたのも魅力的でした。