つたないショパンの音色でだけ繋がれる

ノクターンというとショパンが真っ先に浮かぶものですから、一読して再度読み返すときに、音楽を聴きながら読みました。

指しかあの人を覚えていない。
時間に裏切られていく。

先生と生徒を、男と女とを繋いだのが、教え・教わったピアノだというのが感傷を掻き立てられます。

 しかしその書き口は軽く、テンポの良さすら感じられる、他の方もレビューに書いていらしたんですが、とてもバランスのいい作品だと思います。湿っぽくなりすぎず、明るくもなりすぎず……ただそこに、好いた女の人生にそっと、よりそった男の幽霊がいる。穏やかな終わりに、ピアノの音色が重なる。

 いいもの読ませていただきました。