第7話 スパイダーの娘、ミリア と 伝説のハンバーグ

リフト「ふふふ、きっとそれは 接続詞ですよ。ですが これほど複雑な言語は珍しいですね。きっと戦争の多い国だったのでしょう」


私にはやっぱり無理ね。

メアリーが絶賛していた伝説のハンバーグのレシピがきっと眠っているはずなんだけど 

どこから手をつければいいのかわからない。

グレイスも 「もしも伝説のハンバーグ」を復活させることが出来たらお店をたたまずに済むし

レシピを使用する権利に ハンバーグの売り上げに応じてお金を払ってもいいと言ってくれた。

そこで バールとリフトに相談してみると魔法の呪文が使えるリフトがアドバイスをくれた。

あとは 魔導都市メキストの図書館で少しずつ調べていくしかないのかしら。


「それで 二人とも仕事の方は順調?」


二人は街の外の魔物を駆除する仕事に就くことが出来たらしい。

バールは「武器にこれだけお金をかけているのに どうして服装なんて気にするんだ?」と不思議がっていたけど

その話がわかるのは武器マニアか武器商人ぐらいでしょうね。


「トモちゃんのほうは どうですか?「もる・もる~ず」で働き始めたんですよね?」


そうなのよ それが。。

私が あの日お店を訪ねてみると店長のグレイスがイスごと縄で吊るされて 女の子と何やら話していたわ


「あははははは グレイス あんたも好きねぇ~」

「あんたたち! ブランコだったら外でやりなさい」


「ちっ違うんです トモちゃん・・」


女の子がこちらを振り向くと 女の子はクモの魔族だった。

細い脚に ゼブラ柄のタイツをはいた女の子はこちらへ歩いてくると

ヒールをはいているように コツ コツ コツ と店の床からいい音がした。


「あら 新人のウエイトレスを雇うなんて、まだ そんなお金があったのね。

始めまして 私はミリアよ。お父様が「愛」の意味を込めて名付けてくれた可愛い可愛い 女の子なの」


さらに 話は続いた。


「そねぇ このお店を買い取ったらあなただけは 雇ってあげてもいいわよ。

私は ウエイトレスたちにお人形さんのように色々な服を着せて働かせたいの。可愛いお店でしょ?

じゃぁ 返事楽しみに待っているわ。

それから グレイス!! こんなボロいお店 早くたたみなさいよ。」


あの子は お店でお人形さんごっこをするつもりのようだ。

ミリアが店を出ていくと ソリアたちが厨房から出てきてやれやれと言った感じで

ミリアのことを私に教えてくれた。

あの子はスパイダーの娘らしく、ボロくて買い叩けそうな、この店を狙っているらしい


なるほどね。


「あ あのぉ~ そろそろ 床におろしてもらえませんか? あ でも 何かちょっとイイ感じかも ふふふ」


グレイスは お店を何とかするためにいろいろなレストランを回っていたところで

私に出会ったというわけだった。


私はレストランの休憩室を少し片づけて 床に直接座れる空間を作った。

そしてみんなを集めて 「心の炎を消す魔法」を教えることにした。

でも 結果はさんざんで座ったのはいいけど ソリアとパンキーは「お店の準備があるから」と

すぐに立ち上がり、行ってしまったし、ミーシャはすぐにお腹を空かせて休憩室にあるお菓子を食べだしてしまった。

次回からは 目の届くところにお菓子を置いていてはダメね。

上手くいったのは なんとグレイス。

「あなたにはこれよ はい 天才の本よ」


「ははぁ~! でも 本を拝むこととトモちゃんの言っている「心の炎を消す魔法」は関係があるのですか?」


そう、私はメアリーから「知恵のパズル」を渡されたけど、興味や関心を向けられる対象なら原理は同じはず。


「本の色・形・重さをよくよく 観察するのよ。やるなら全身全霊ね。 でもまだ ページをめくっちゃダメよ、それは次のステップだからね 楽しみにしているのよ」


1日目はそんな感じで終わった。

レストランの仕事の風景は ミーシャがテーブルに体をぶつけてお客さんの水をこぼしたり

ソリアは 素早い動きをするけど注文や料理を運ぶテーブルを間違えたり。

パンキーは お皿に盛りつける料理の量がその時々で 多くなったり少なくなったりしていた。

私は 昼はここで夜は「カラスの止まり木」で働いた。


そんなある日この街でモルモットレースが開かれると言うことを耳にした。

優勝者には金貨10枚が送られるらしい。

「いい馬が1頭買える金額ね 参加するわ!」


私はモコちゃんと参加した。

スパイダーの娘のミリアも参加していて ミリアは挑発的な事を私に言ってきたわ

でも レースが始まったら私とミリアの一騎打ちになって 最後の障害でジャンプしたときに

モコちゃんのクルリンヘアーがクッションになって 私たちは叩きつけられることなく、優勝できたの。

ミリアは 悔しがっていたわね。「覚えてなさい!」って言ってたわね。


レストラン「もる・もる~ず」のみんなも大喜びしてくれたわ。

そしてミーシャから相談を受けたの。

ミーシャはパンキーが好きだったらしく 痩せたいらしい。

でも お菓子への執着が自分でも抑えられずに 自分を責めてばかりいるんだとか。

「あなたって 仕事は出来るし、レースで優勝しちゃうし、素敵よね。私ね パンキーが将来お店を開いたらパンキーのお店でウエイトレスをするのが夢なの。」


これは。。。使える。

実際に ミーシャは朝一番に開かれる「心の炎を消す魔法」の修行に参加するようになったので

秘策を試してみた。


「さあ あなたにはコレよ! パンキーに作ってもらったドーナッツ。今日の修行はこれを使いましょ」

「早くぅ~ 早くぅ~ 食べたいわ はぁはぁ」


修行のやり方は グレイスの時と同じで全身全霊で観察して

さらにミーシャの場合は味や臭いから唾液、食感やのど腰まで徹底的に感じ取ってもらったわ

愛する人のドーナッツは 丸のみしちゃだめなのよ、味わって食べなくっちゃね。


数日後 ミーシャは最近 食べ物が美味しく感じるようになったし、食べる量も減ってきたと言ってた。

お客さんに水をこぼすことは無くなったわ。

グレイスも 悩み事で疲労困憊していた表情が軽くなったみたいで最近は「何とかなる」って

言い出すようになったの。


そんな二人の変わりように驚いたのは パンキーとソリアよ。

ダメダメの グレイスとミーシャが今では 自分たちより仕事が出来るようになっちゃったんですもの。

焦って私のところに相談に来た姿が笑えたわ。


「あの二人は どうしちまったんだ!トモちゃんは何をしたんだ。俺たちにも教えてくれよ。うぉぉぉ!」

「ミーシャは 私よりも動きが遅いのに私より仕事ができるのよ。どうして トモちゃん?」


「実はね 私はメアリー バレンタインに「占い」と「心の炎を消す魔法」を習ったのよ」


私は メタルのレリーフを指さした。

二人はメアリーのことは 知らないようだったけどお店の壁にかけられているメタルのレリーフは

有名人だと言うことはわかったみたいで私にひれ伏すように尊敬の眼差しを送ってきたわ。


ソリアは長女で何でも一番最初にやらなきゃいけないって育てられてて 

自分の子供の世話からレストランの仕事まで精一杯に働いていたし。

パンキーは 料理のレシピを考えることが好きらしくて 料理のレシピを考えない時間はないらしいのよ。


一見したら二人とも まじめないい人たちなんだけど

仕事のミスが多いところをみると、心の深層ではどんちゃん騒ぎが起こってそうね。


「これ? この紙で何をすればいいの?」

「二人には思いつく限りのことをこの紙に書いてほしいの。ソリアには 今日、やらなきゃいけないと思っている事を。パンキーには料理のレシピをね。頭に思いついたことをすべて書き込むのがコツよ・・」


その後、二人からは無駄な動きが減っていき、ソリアは「ホントにやらなきゃいけない事は意外と少ないのね」と自信ありげに話してくれるようになった。


パンキー「なあ トモちゃん。伝説のハンバーグのレシピだけどおそらくこのページとこのページに書かれていると思うぜ。レシピを書いている俺にはわかる。俺ならこう書くぜ うぉぉぉ!」


ひょんなことから パンキーが伝説のハンバーグのレシピを見つけ出してしまった。

食材の分量が書かれているページは 言語が違っていても書き方はパンキーが書いているものと

同じだと言うのだ。



リフト「そんなことがあったのですか? それで 「カラスの止まり木」を辞めたんですね」

トモちゃん「そうなの。伝説のハンバーグを復活させてみたくなっちゃった。少しだけ遠回りしてもあの人は許してくれるかなって。。」


バール「あの人って誰だ?大切な人がいるようだな。 それより 最近街の周りの魔物の動きが慌ただしくなっているようだ。街の外には出ないほうがいいぜ」



リフト「実はそれを伝えにお昼を食べに来たのですが。ですが 本の翻訳についてです・・お金を払って人に頼んでみてはいかがですか?同僚の魔導士たちを紹介しますよ。」

トモちゃん「私が人を雇って翻訳をするってこと??」


私にはモルモットレースで優勝したお金はある。

そして 伝説のハンバーグが完成すればグレイスがハンバーグの売り上げに応じてお金を払ってくれる。

でも 私なんかが 人を雇っても いいのかしら??

ピョンタ、、あなたはどんな気持ちで人の上に立ったの??私にもできるかしら。。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マインドフルネスで大抵はうまくいく(奪われた農園を取り戻す話) もるっさん @morusan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ