第4話 魔導都市メキストに到着

「グルルルル」

「どうしたの モコ?」


占いの館を出てしばらくするとモコは時々「グルルルル」と鳴き声を出すようになった。

周りには何もいないみたいだけど・・・ なんだか怖いわね・・。

動物にしかわからない何かがあるのかしら?


「急いで離れたほうがよさそうね。モコちゃん、乗せてくれる?」

「プイプイプイ!!」


モコの上に乗ると 茂みが大きくガサガサとなり出した。

何かいるのは間違いない。

モコも全速力で走りたがってるのがわかる。


茂みから何かが出てくる前に私たちは逃げ出した。

広い道だしモコの足ならきっと逃げ切れると思ったのだけど 進んでいくと道幅は狭くなり道の両脇には木が生い茂るようになってきた。


「ガサガサガサ」


「グルルルル」


突然 道の前方の茂みが揺れて人を殺すために生まれてきたことが一目でわかる黒い魔物が姿を現した。

私たちは黒い魔物から逃げたわ

地形を利用したり 木の枝を障害物にしたりあの手この手で逃げたわ。

でも


「ギュルルル」

「グルルルル」


だめ!やめて!! モコちゃん!! 

私は魔物の前に立ちはだかった。

すると 魔物は動きを止めて 私をにらみつけてきた。


「プイプイプイ」

え?

モコちゃんが 私の腰を加えると ひょいっと背中に乗せて逃げ出した。

何があったのかわからないけど。どうでもいいわ。魔物はボーっと突っ立ったままだった。

・・・・

危なかったわ。

モコちゃんのおかげよ ありがとう。

「プイプイ」

私たちは 森の中の水が流れている場所を見つけたので休むことにした。

モコちゃんも 食事がしたいようで草をついばみ始めたようなので 私はメアリーにもらったパズルを解いて時間をつぶす。


あんなことがあったばかりなのに パズルを手のひらに置くと気持ちがスッと切り替わる。

そして パズルを眺め。。。少しずつ・・全身全霊でパズルに意識を向けていく。

色は?重さは? 形は?

すると パズルの面体の数が減り始めた。

深く・・ 深く・・ 深く・・


「メアリー!」

「おお トモちゃん帰ってきたのか? よしよし。怖い思いをしたんだね。もう心配いらないよ。占いの館でずっと一緒に暮らせばいい。トモちゃんがいなくなってから お客があんたを指名したがるようになって困っていたのさ さあ 占いの館へ帰ろう・・」


おっと。途中で気がそれたみたい。

私はメアリーのことを考えたくなったけど、何もしないまま再びパズルを眺めた。

その後も何度か私の気持ちを反らせるような幻が脳裏によぎった。

でも もう一人の私が不安や恐怖の幻を見せているかもしれないと メアリーに教えてもらっていたので 脳裏によぎるものの全てを私の気持ちとして相手しなくていいと考えると 気持ちが楽になった。

そしてパズルは 過去最高の記録になった。




「プイプイ」 

ツンツン


背中を柔らかい何かがつついた。 モコだ。

どうやら 思っていたよりも時間が過ぎたみたいね。

どのくらい経ったのかしら?

日の傾き具合から1時間くらいかな。


「ギュルルルぅ~」


何の音? 魔物の声じゃないみたいだけど。

耳を澄ませると 話し声が聞こえてきた。


「だから 前にあった民家で食料を分けてもらえばよかったのに」

「うっせーうっせーわ。魔導都市メキストに着けば、この空腹もチャラになるだろ!」

「あと1日は 何も食べられませんけどね」

「ギュルルルぅ~」


そっと覗き込むとケンカをしている二人の人族の男たちがいた。

いいや よく見ると赤髪に角が生えていたり、もう一人にはキツネのようなシッポが生えている。

二人とも魔族のようだ。

二人のケンカはしばらく続きそうな雰囲気だけど、でも 私ならこのケンカを仲裁するのは簡単そう。

だって 私のバスケットには沢山の食糧が入っていたから。


「あの~ お二人さん。。私は魔導都市メキストまで向かう者ですが私の足で後二日ぐらいだと思います。 

それで 食料が余ってしまいますので少しですがお譲りしましょうか?」


バール「お嬢さんこれはこれは・・なーんて言うと思ったか?気持ちはありがたいが俺たちが実は悪人だぜ!がははは」

リフト「冗談はよしてください。彼女の心配をするより素直に感謝をすればいいじゃないですか。旅は持ちつ持たれつなのですから。バールが失礼しました。私はリフトと申します・・・・ の旅をして魔導都市メキストに向かう途中なのです」


少し早い夕ご飯を一緒に食べながら二人と話をしてみると二人とも無邪気に旅を楽しんでいるという風の人たちだった。


「うりゃ!!」 スパッ!

「ファイアボール!!」 ボボボ

「ギュルルル・・・」


そして この人たちは強い。黒い魔物なんてあっという間に倒してしまった。


リフト「トモちゃん お疲れでしょう。これは私の国のお菓子ですがとても甘いので疲れが取れますよ」

バール「リフト お前!ホントは食料もってるじゃねぇか! 俺にもくれ!」

リフト「ダメです。 このお菓子もトモちゃんに食べてもらったほうが幸せなはずです」

トモちゃん「リフト ありがとう。でも 四つに分けましょう」

モコ「プイプイ♪」


私は 氷の結晶のようなアメを四つに割った。このころには私たちには友情のような感情が芽生えていた。

そうして 魔導都市メキストに到着した。

ここ魔導都市メキストは 出入りは自由な国だが魔石の持ち込みや魔力の量を管理している。

国に入るには 魔石量の調整のためにそれに応じた税金がとられていた。


「よし! そこの3人!門を通れ」

「俺たちは門を通るだけで 税金がかかるんだ。トモちゃんが羨ましいぜ」

「あらそんな事ないわよ。 私にも魔力があるの。魔導通信機だって動かせたんだから」

「ふふふ。それはすごいですね。でもそのぐらいでは税金がかかることはありませんよ。さきに 私たちの手続きが終わるまで噴水のところで待っていてください」


兵士たちがざわめき始めた。 

「何かの間違だろ? 金貨1000枚だと!。これは 門が壊れているに違いない。だが あるいは魔族か!」

危険な視線が二人に向けられた。しかし 指揮官らしき兵士が現れて。

「それはない。いくらなんでも人のソレを超越している。 さっきまで正常に動いていたはずだ。 

おい!そこの人族の女、お前は邪魔だから先へ行け!!

お前たち二人は もう一度門をくぐるんだ!それから武器を地面に置くんだ」


二人だけもう一度門をくぐらされた。


「金貨5枚か お前たち相当できるヤツのようだな。一時的に門がおかしくなったのも納得だぜ。失礼したな」

「ちぇ! 前は金貨3枚で通れたのに世知辛い世の中になったぜ」

「まあまあ バール。私たちも強くなったと言うことですよ」


私たちは滞在許可書を発行してもらい 無事に入国することが出来た。


リフト「これからトモちゃんは どうするのですか?よければ私たちと来ませんか?」

トモちゃん「いいえ、私は 働いてお金を稼ごうと思ってここへ来ましたから」


私たちはこれからのことについて簡単に話し合った。

バールとリフトは 用心棒の仕事を探しに行くらしく 私は金貨100枚を稼ぐために仕事を探すと言う話をした。

長かったけど ようやく仕事をすることが出来る。

大金を稼ぐためには どうしても大きな街まで来る必要があったから。


バール「なあ どうしてそんなにお金が必要なんだ?無理に話さなくてもいいけどよ。なんつーかよ 気になってだな・・ははは」


私は ビンセントとフジャラに農園を乗っ取られたことについて話した。。


リフト「今 ビンセントとフジャラといいましたか?それは本当ですか?」

バール「アイツらは 昔ここいらを統治していた魔族スパイダーの手先だぜ」


何と言うことだろう。

人族の寿命は短い。 だから その隙を突いてスパイダーは私たちの農園を取り返そうと企んでいたのだった。

その後 二人には「かかわってじゃいけない」「やめておけ」とさんざん説得された。

でも 私は取り返したい。だって年齢は離れていても、一緒にお酒は飲めなくても私は旦那の守りたかったものを守りたい。

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